変な話

ちいさな物語

#079 乙女ゲーム化した高校生活にモブの俺がツッコミ入れていきますね

「いやいや、ありえないだろ」俺は隣の席で繰り広げられる光景に、思わずツッコミを入れた。ここはごく普通の高校。そしてこの物語のヒロイン——橘ひまりは、決して”かわいい”タイプではない。見た目は普通、性格はどちらかというと生意気。気分屋の猫みた...
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#078 行列の先にあるもの

その日、俺は仕事帰りに駅前の広場を通った。いつもなら通り過ぎるだけの場所なのに、今日は何かがおかしかった。――行列だ。ものすごく長い行列ができている。最初は人気のスイーツでも売っているのかと思った。でも、列に並んでいる人たちはみんなスマホを...
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#071 見たことがある

「もう逃げ場はないぞ!」暗闇にそびえる崖の上、刑事・田村は拳銃を構えて叫んだ。その先に立つのは、指名手配中の銀行強盗犯・柴田。汗だくの顔を歪ませ、肩で息をしながら後ずさる。しかし、もう後ろは崖。ここからの逃亡は不可能だ。「くっ……」柴田は崖...
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#066 肉の正体

「この肉……どこ産なんだ?」ステーキナイフを持ちながら、俺はシェフに尋ねた。「珍しいですよ」シェフはにやりと笑う。「地球では、なかなか食べられませんから」地球?噛み締めた瞬間、ジューシーな肉汁が口の中に広がる。豊潤な香り、深みのある味わい。...
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#065 ワカメカタストロフ

ワカメって、こんなに増えるものだったか?俺は台所のシンクを見下ろし、唖然としていた。スーパーで買った乾燥ワカメをちょっと戻すつもりだったのに、気づけばシンクが緑の海になっている。水を吸ったワカメが、どんどん膨らみ、シンクからあふれ出し、床に...
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#060 無職! 桃太郎、行きます!!

「桃太郎になってくれませんか?」知らない男に、いきなりそう頼まれたのは、俺が会社をクビになり、ヤケ酒をあおっていた夜のことだった。「は?」「いや、だから。鬼を退治してほしいんです。報酬は……1000万円でどうでしょう」1000万か……。悪く...
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#059 チョコと手錠

いや、あのね、聞いてほしいんだけど——こんなの、普通ないでしょ!?バレンタインだったのよ。女子としては一世一代の大勝負の日なわけ。――で、その前に私、人生で初めて一目惚れしたの。駅でさ、偶然見かけたイケメン。長身で、黒髪がさらっとしてて、ス...
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#055 インフルエンサー・こた🐶

朝起きてスマホを開いた僕は、思わず叫んだ。「えっ……何これ!?」SNSのタイムラインに僕の超絶恥ずかしい写真が投稿されていた。ボサボサ頭でヨダレを垂らして寝ている姿、パンツ一丁で冷蔵庫を漁る姿、変なポーズで踊っている動画まで——。しかも投稿...
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#053 ご機嫌メーター

「今日の機嫌、72点」 朝、目覚めてすぐに手首に巻いたデバイスで測る。その数値はアプリに自動で登録され公開される。それが今の社会の常識だった。 「お、今日は悪くないな」 数年前に開発された「ご機嫌メーター」。血圧計のように簡単にその日の機嫌...
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#052 トイレットペーパーの妖精

深夜、ふと目が覚めた。喉が渇いたわけでもない。トイレに行きたいわけでもない。でも、何かの気配がする。布団からそっと抜け出し、廊下に出る。暗闇の中、トイレの扉の隙間から、ぼんやりとした光が漏れていた。誰かいる……?恐る恐るドアを開けた。そこに...