ちいさな物語

#127 落ちてきた雲

朝、目を覚ました瞬間、異変に気づいた。カーテンを開けると、目の前の景色に息をのんだ。空はびっくりするほどの快晴で、そこは別にいいのだが、問題は――雲がすべて落ちてきていた。町中が、白くもこもこした塊で埋め尽くされている。電線も信号も、車も家...
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#126 桜の散る夜

昔々、と言うほどではないが、今よりずっと昔の話だ。ある村のはずれに、大きな桜の木があった。それは見事な一本桜で、春になると村中の者が見に行くほど美しかった。だが、不思議なことに、桜の散る夜にだけ、そこに娘が現れるという噂があった。その娘は、...
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#125 剛毛の生えてくる道

俺が毎日通る道には誰も通らない細い裏道がある。表通りを歩けばいいのに、わざわざそこを使うのは、なんとなくその雰囲気が好きだからだった。古びたレンガの壁が両側に立ち並び、湿った匂いが漂う。昼間でも少し薄暗く、まるで時間が止まったような場所。日...
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#124 右手の暴走

きっかけは、中古屋で買った一本の万年筆だった。アンティーク風で格好良く、気に入って即購入。しかしペンとその蓋をとめるように小さな紙が貼ってある。よく見るとそれは……。「お札?」小さいながらも神社のお札のような模様がびっしりと書き込まれている...
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#123 青い鳥

絵本から飛び出したように美しい青い鳥を、少年たちは捕まえてしまう。手のひらの中の奇跡を、どうすべきか。
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#122 祖父のビー玉

祖父の遺品から出てきた一粒のビー玉。のぞき込むと、そこには“もうひとりの自分”が映っていた。
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#121 行灯さま

お前さん、どうせ退屈してるだろう。待っている間、昔話でも聞かないかい?ほら、耳を貸してごらん。むかしむかし、ある嵐の夜の話さ。山奥で暮らす若者、名前はタロって言ったかな。そいつが猟に出て、帰り道で道に迷っちまった。風がビュウビュウ吹いて、木...
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#120 城

あれは妙な一日だったよ、ホント。
朝起きたらいきなり城から来たとかいう使者が家の前に立っててさ、ものすごい丁寧な口調で「あなた様をお迎えにあがりました」って言うわけ。
俺、普通の庶民よ? 貴族でもないし、城に縁なんてあるわけないのにさ。人違...
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#119 隣の家の花

俺が住んでいるのは、普通の住宅街だ。静かで、のどかで、特に変わったこともない。そう思っていた。あの花を見るまでは。隣の家の庭には、大きな花が咲いている。鮮やかな赤色で、肉厚の花びらが妙に生々しい。南国のジャングルに咲いていそうなイメージだ。...
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#118 エビフライ・エクスプロージョン

その日は、朝からもう散々だった。目覚ましは鳴らないし、シャワーのお湯は出ないし、家を飛び出したら豪雨だし、あげく電車は遅延。やっとの思いで会社にたどり着いたら、ちょうどお昼休みが始まっていた。どうせ残業分がたまってたし、フレックスを利用した...