不思議な話

ちいさな物語

#178 君を観測するまで、君は存在しなかった

ぼくは、毎朝同じ夢を見る。灰色の霧が立ちこめる部屋。窓の外にはなにもない。ただ、光のようなものが、ぼんやりとそこにあるだけ。その部屋の中央に、彼女は座っている。黒髪の、透き通るような肌の、憂いを含んだ目をした少女。名前も、年齢も、なにもわか...
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#176 竜宮城の王子様

ねえ、信じてくれる?水族館で家族とはぐれて迷子になっただけなのに、わたし、竜宮城に行ったんだよ。うまく説明できるかわからないけど、あの日のこと、話してみるね。それは、家族で出かけた大きな水族館でのことだった。夏休みの中頃、すごく蒸し暑い日で...
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#175 わかりやすいご利益のある神社

ご利益が“メニュー表”で示された神社。10円から願いが買える、やたら話の通じる神様を訪ねてみると——。
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#171 空き缶の恩返し

その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く...
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#170 地下三階

放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる...
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#168 勇魚の骨と海神の約束

むかしむかし、海辺の村にね、五助という漁師がいたんだと。五助は毎日、小舟に乗って漁をして暮らしておった。ある日、大きな嵐の翌朝に浜辺を歩いていると、見たこともないような大きな骨が砂浜に打ち上げられていたんだそうな。「これは何の骨じゃろう?」...
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#167 世界中でただ一人

目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて...
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#165 老婆の井戸と願いごと

「願いを叶えてやろう。大切な何かと引きかえに」——井戸のそばの老婆が差し出す取引の、ほんとうの意味とは。
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#163 そこにある道

引っ越したばかりのアパートは、静かでとても居心地が良かった。ただ一つ、部屋の真ん中を通る妙な「通り道」があることを除いて。最初に異変を感じたのは引っ越して数日後の深夜だった。寝付けずにぼんやり天井を眺めていると、ふと誰かが部屋の中を横切った...
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#160 骨笛

トウジがそれを見つけたのは、村の外れの川辺だった。白く乾いた骨が、土に半ば埋もれるようにして転がっていた。鹿の骨だろうか。それとも……。「変わった形だな」拾い上げてよく見ると、中が空洞になっていて、まるで笛のようだった。試しに息を吹き込むと...