日常・現代

ちいさな物語

#072 頭の上に

誰もが俺の顔を見たあと、一瞬だけ視線を上にずらす。頭の上に、何かいる——でも、見た人はみんな、すぐに忘れる。
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#069 不可解な裁判

気がつくと、見知らぬ法廷に立たされていた。罪状もわからないまま、黒ずくめの傍聴人がじっとこちらを見つめている。
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#068 鈴の音の山

おやおや、旅の方。そんなところで立ち止まって、どうしたんだい? ん? 鈴の音? 山道を歩いていたら、鈴の音が聞こえて追いかけきた? そりゃ、変な話だねぇ。ああ、もしかして……じゃあ、ちょっと歩きがてら、ここらの話をしてやろうか。このあたりに...
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#065 ワカメカタストロフ

ワカメって、こんなに増えるものだったか?俺は台所のシンクを見下ろし、唖然としていた。スーパーで買った乾燥ワカメをちょっと戻すつもりだったのに、気づけばシンクが緑の海になっている。水を吸ったワカメが、どんどん膨らみ、シンクからあふれ出し、床に...
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#058 同じ場所で

2月8日駅近くの細い路地を歩いていたら、急に飛び出してきた人とぶつかってしまった。思わず「わぁ!」と叫んでしまい、相手も驚いた顔をしていた。見れば、同年代くらいの女性で、何かを探しているようだった。「すみません!」と謝られて、俺も「こちらこ...
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#056 幻のチョコレート店

「こんなところにチョコレート屋なんてあったっけ?」仕事帰り、駅前を歩いていると、小さな店が目に留まった。深い紺色の外壁に、金色の文字で「chocolaterie Noire」と書かれている。シックで落ち着いた雰囲気があり、妙に惹かれる。店内...
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#055 インフルエンサー・こた🐶

朝起きてスマホを開いた僕は、思わず叫んだ。「えっ……何これ!?」SNSのタイムラインに僕の超絶恥ずかしい写真が投稿されていた。ボサボサ頭でヨダレを垂らして寝ている姿、パンツ一丁で冷蔵庫を漁る姿、変なポーズで踊っている動画まで——。しかも投稿...
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#053 ご機嫌メーター

「今日の機嫌、72点」 朝、目覚めてすぐに手首に巻いたデバイスで測る。その数値はアプリに自動で登録され公開される。それが今の社会の常識だった。 「お、今日は悪くないな」 数年前に開発された「ご機嫌メーター」。血圧計のように簡単にその日の機嫌...
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#052 トイレットペーパーの妖精

深夜、ふと目が覚めた。喉が渇いたわけでもない。トイレに行きたいわけでもない。でも、何かの気配がする。布団からそっと抜け出し、廊下に出る。暗闇の中、トイレの扉の隙間から、ぼんやりとした光が漏れていた。誰かいる……?恐る恐るドアを開けた。そこに...
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#051 クイズ番組の向こう側

夕飯を食べ終え、ソファに寝転がりながら何となくテレビをつけた。画面には派手なネクタイの司会者と、三人の解答者たち。お決まりのクイズ番組だ。とりあえず人の声がしていた方が落ち着くのでテレビをつけたままにしてスマホをいじる。「第1問! 日本の首...