ほっこり

ちいさな物語

#198 冒険者と一匹の猫

レオンは剣を抜きながら、ダンジョンの奥へと慎重に進んでいた。「この先に、財宝が眠っているはず……」古びた地図を頼りに、彼はこの未踏のダンジョンに挑んでいた。だが、進むほどに違和感が募る。罠は発動せず、魔物も一切姿を見せない。まるで、何かに導...
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#197 逆さまの雪

その町では、雪は降るのではなく、地面から空へ昇っていく。一片ごとに、誰かの願いを抱いて——。
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#193 散歩の達人

僕の夢はシンプルだった。何か一つの道を極めること。今、目指しているのは散歩の達人。人間の散歩、犬の散歩、どんな散歩でも完璧にこなしたかった。ある日、究極の散歩道があると噂される森を訪れた。入り口には『あらゆる散歩者を歓迎する』という心躍る看...
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#192 手袋、怒りの暴走

冬の公園のベンチに、ぽつんと落ちていた赤い手袋。それは右手だけのさみしい存在だった。「ご主人はきっとすぐに戻ってくる!」片手袋は前向きだった。だが、一日経ち、二日経ち、ついには一週間経っても、彼女の持ち主は姿を見せなかった。通りかかった老婦...
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#190 掛け軸の中から

祖父が亡くなり、古い家を整理していると一幅の掛け軸が出てきた。
墨で描かれた山水画。穏やかな山々と静かな川の流れが広がり、遠くには霞がかかっている。なかなか見事で美しい軸だった。しかし、その掛け軸を掛けて以来、夜になるとどこからか水の音が聞...
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#188 呪われた黄金都市

「空からお金が降ればいいのに」少年の願いは叶い、街に黄金の雨が降りそそぐ。やがて、それは止まらなくなった。
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#187 自分がドラゴンだと言い張る猫

うちの猫、タマが突然言葉を話し始めた。猫あるあるなんだけど、タマがじぃっと俺を見ている。こういうときは何か要求があるときだ。「タマちゃ〜ん、どうちたの? ちゅ〜る欲しいの?」猫バカな俺はタマの頭をなでながら、抱きあげた。健康のためにおやつの...
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#185 妖精の願いごと

駅へと続く細い道を歩いていると、道端に潰れかけたペットボトルが転がっていた。普段なら気にも留めないけれど、その日はなぜか、そのボトルがやけに輝いて見えたのだ。妙に気になって、拾い上げてみる。ペットボトルの中を覗くと、小さな光が揺れていた。驚...
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#184 あの人の話

「なあ、覚えてるか? ほら、あの人。あの喫茶店にいた、なんてことないけど、不思議と気になる感じの人」そう言うと、この町の年の近いやつは、大抵みんな、少し笑ってうなずく。名前を出さなくても通じるんだ。あの人は、そういう人だった。初めて会ったの...
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#183 山のちからくらべ

向かい合う二つの山が、どちらが立派かと言い争う。霧を吐き、花を咲かせ——むかし語りのやさしい寓話。