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ちいさな物語

#192 手袋、怒りの暴走

冬の公園のベンチに、ぽつんと落ちていた赤い手袋。それは右手だけのさみしい存在だった。「ご主人はきっとすぐに戻ってくる!」片手袋は前向きだった。だが、一日経ち、二日経ち、ついには一週間経っても、彼女の持ち主は姿を見せなかった。通りかかった老婦...
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#189 コンビニ弁当マニアの俺がつぶやいていくぜ?

ちょっと語らせてくれ。俺、コンビニ弁当が人生の全てみたいなコンビニマニアなわけよ? 今日は特に俺の推し『ハピマ』『デイフレッシュ』『サンマート』の弁当の魅力を爆速で語ってくぞ。まず『ハピマ』な。ここはもう完全に弁当界のAppleよ。革新性が...
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#188 呪われた黄金都市

「空からお金が降ればいいのに」少年の願いは叶い、街に黄金の雨が降りそそぐ。やがて、それは止まらなくなった。
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#186 風の市と少年

「まるで自分の影とだけ話しているみたいだった」市でよく見かける女は、彼をそう表現した。レアという名の少年が風の市に現れたのは、南の草原に乾いた季節風が吹きはじめる頃だった。市といっても常設の町ではない。風が止んだときだけ開かれる移動市で、誰...
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#183 山のちからくらべ

向かい合う二つの山が、どちらが立派かと言い争う。霧を吐き、花を咲かせ——むかし語りのやさしい寓話。
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#180 大きな町と小さなドア

その町には、「小さすぎるドア」があった。壁のように広がる白い建物の中央に、子どもでも肩をすぼめなければ通れないほどの、異様に狭い扉。誰もその先を見たことがない。なぜなら、その町に暮らす人々は、みなとても大きかったからだ。大きい——それは体格...
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#177 納豆の糸

納豆が好きだ。昔から毎朝、白いご飯にかけて食べるのが習慣だ。混ぜる回数はきっちり三十回と決めていて、醤油は少なめ、ネギはたっぷり。今日も同じように朝食を楽しむはずだった。その日、納豆の糸が妙に丈夫だった。器から口へ運ぶ途中で切れることなく、...
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#172 選択肢の多い料理店

薄暗い夜道で空腹を抱え歩いていると、真新しい料理店を見つけた。ネオンの看板には「セルフサービスレストラン」と書かれている。入り口は無人で、自動ドアをくぐると、中には無機質なタッチパネルが並んでいた。僕は空腹に急かされ、画面をタップした。『よ...
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#168 勇魚の骨と海神の約束

むかしむかし、海辺の村にね、五助という漁師がいたんだと。五助は毎日、小舟に乗って漁をして暮らしておった。ある日、大きな嵐の翌朝に浜辺を歩いていると、見たこともないような大きな骨が砂浜に打ち上げられていたんだそうな。「これは何の骨じゃろう?」...
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#165 老婆の井戸と願いごと

「願いを叶えてやろう。大切な何かと引きかえに」——井戸のそばの老婆が差し出す取引の、ほんとうの意味とは。