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ちいさな物語

#023 瞳をとじて

酔った勢いで「目を閉じても絵が描ける」と豪語した翌朝、鏡の中の自分の顔は、見事な“芸術”で埋まっていた。
ちいさな物語

#021 王様の遊び

王の奇妙な遊びが始まったのは、彼が即位して間もない頃だった。ある日突然、「民の暮らしを学ぶ」と言って城を出て行き、ボロボロの服をまとい市井を歩き回るようになった。家臣たちは「気分転換でしょう」と笑っていたが、王は次第にその遊びに没頭していっ...
ちいさな物語

#020 終わらない一日

この繰り返しが始まったのはいつからだろう。私はもう何度も、同じ一日を体験している。この日は私にとって人生最悪の日だ。大切な人を失うという、耐え難い悲劇の日。その朝、彼女と最後の口論をしたのを覚えている。くだらないことで言い争いになり、彼女は...
ちいさな物語

#019 薔薇色の嘘

片田舎に佇む古びた屋敷に住むお嬢様、クラリッサは、目が見えない。彼女の目は開いているが、光も色も感じることができない。それでも、彼女の世界は鮮やかだった。執事のアルフレッドが、彼女に毎日「景色」を語ってくれるからだ。「今日は曇り空です。灰色...
SF

#016 新米時空警察の大失敗

一人で留守番中の新米時空警察。手を出すなと言われたのに動いてしまい、哲学の歴史をまるごと巻き込む大失敗を——。
SF

#014 君への遺書に

目を覚ました時、僕の体はほとんど動かなかった。部屋の中は静まり返り、唯一の音は、いつくもの管につながれた君が隣でデータを処理する機械音だけだった。僕の希望が聞き入れられているのであれば、世界のありとあらゆるデータが今君に注がれている。「プロ...
ちいさな物語

#012 パワハラ課長とカブトムシ

ある朝、パワハラ課長がカブトムシを頭に乗せて出社してきた。「これからは虫の王者とともに課を治める」——。
ちいさな物語

#010 狐火そば

江戸時代、深川の外れに「狐火そば」というそば屋があった。その名は、店先に夜ごと灯る不思議な青白い光に由来する。店主の弥助といっては寡黙で愛想はなかったが、打つ蕎麦は江戸一だと皆「噂で」知っていた。なぜならそれを食べた者に直接聞いたわけではな...
ちいさな物語

#009 透明な涙を流す獣

仕事帰り道でのことだ。急いでいる時は森の横道を通る。いつもなんてことはない田舎道なのだが、その日は違った。静寂の中、不意に低く響く鳴き声が聞こえる。見渡すと木々の間に光るものがあった。恐る恐る近づくと、そこには見たこともない生き物がいた。体...
ちいさな物語

#008 無限こたつ

家族四人で囲むこたつ。テーブルの上には湯気の立つ土鍋と、ごく普通だけど魅力的な具材が並んでいる。僕はデザートにと出してきたみかんを片手に、鍋が煮えるのを待っていた。「このこたつ、居心地いいよね」と妹もみかんをもてあぞびながら言った。僕も同意...