寝る前に

ちいさな物語

#160 骨笛

トウジがそれを見つけたのは、村の外れの川辺だった。白く乾いた骨が、土に半ば埋もれるようにして転がっていた。鹿の骨だろうか。それとも……。「変わった形だな」拾い上げてよく見ると、中が空洞になっていて、まるで笛のようだった。試しに息を吹き込むと...
ちいさな物語

#158 空色の続き

「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める...
ちいさな物語

#157 風の境界線

小学生の彩奈は、母が誕生日に買ってくれたリボンをとても気に入っていた。その日、彼女は近くの丘で一人遊びをしていたが、突然吹き抜けた風がそのリボンをさらい、空高く持ち去っていった。「あっ、待って!」彩奈はリボンを追って駆け出した。風に流される...
ちいさな物語

#154 マルチ勧誘VS結婚詐欺師

ネットで出会ったその女性は、僕にとって理想のターゲットに思えた。実際にカフェで会ってみるとその予想は確信に変わる。美人だが地味な服装で、世間知らずそうなふわっとした笑顔。人当たりがよく、押しに弱そうだ。マルチ勧誘を生業にしてきた僕の直感が、...
ちいさな物語

#152 消えた親友

それは雨の日曜日だった。大学に合格し、春から一人暮らしをすることになった。そのための部屋の片付けをしていた僕は、ふと昔のアルバムを手にする。写真の中には、小学生の頃の僕が満面の笑みを浮かべている。写真の中で僕は知らない少年と楽しげに肩を組ん...
SF

#151 月の民宿

月面の端っこで、私たち家族は小さな民宿を営んでいる。父と母と私、それからゲツメンシロウサギのミミちゃん。ミミちゃんの先祖は地球のウサギなんだけど遺伝子が組み換えられた人為的な新種なんだって。ここの民宿にお客はほとんど来ない。地球人なんて、な...
ちいさな物語

#150 山奥の鏡池

昔々、と言っても、それほど遠い昔ではない。ある村の山奥に、誰も近づこうとしない池があった。その池は「鏡池」と呼ばれ、どんなときも水面が静かで、まるで鏡のように景色を映すという。しかし、村人たちは口をそろえてこう言うのだ。「あの池の水には、絶...
ちいさな物語

#148 王女は今日も最前列

我が国のプリンセス、アンジェリカ姫には大きな秘密があった。そう、彼女は熱烈な「輝きの聖騎団」の追っかけ――いや、輝きの聖騎団の熱心な信徒なのだ。今日も姫様は鏡の前で変装に余念がない。侍女が悲痛な声で叫ぶ。「姫様、お願いですから、推し活で城を...
ちいさな物語

#146 夢渡りさん

「昨日さ、不思議な夢を見たんだよね」カフェで向かい合った友人のミサキがそう話し始めた。「どんな夢?」僕が尋ねると、ミサキは興奮したように身を乗り出す。「なんか知らない街で、背の高い男に会ったんだけど。そいつが言うの、『君、またここに来たね』...
ちいさな物語

#143 どこまでも続く夜道で

少女は歩いていた。街灯の少ない夜道。足音だけが心細く響いていた。後ろを振り返っても、誰もいない。前に進んでも、何も変わらない。曲がり角を三回曲がれば元の道に戻るはず。けれど、五回でも十回でも、少女は同じ街角へ戻ってきた。「ここ……どこ?」自...