コメディ

ちいさな物語

#578 大「代行」時代

いやもう、マジで現代社会の効率化ってのはどこまで行っちゃうんですかね?皆さんもご存知でしょう、数年前に流行った退職代行。そのとき僕はまだ笑っていました。いやまあ、気まずいもんな、とは思ったわけです。上司に「辞めます」と言うの、胃がきゅっとし...
ちいさな物語

#564 ダンスタウンダンス

最初は「新手のフラッシュモブか?」って思ったんだよ。月曜の朝、駅前。全員がスマホを見ながら歩く、いつもの朝だと思っていた。そこへ突然、パン屋の店員がトングを持ったまま、ヒップホップのステップを刻み始めた。トングをカチカチと鳴らしながら、腰を...
ちいさな物語

#563 夢の途中で

最初に気づいたのは、たぶん2月の終わり頃だったと思う。その日の夢はやけに鮮明だった。それ自体はたまにあることなんだけど、このときはもっとおかしな夢だった。「遅刻だ!」って大慌てで駅の階段を駆け上がっていく。でも改札前で定期が見つからない。泣...
ちいさな物語

#560 夢の税務署からの呼び出し

最初の呼び出しは、寝落ちしたソファの上だった。目を閉じたはずなのに、俺は蛍光灯の白い光の下に立っている。床は灰色のタイルで、空気は書類と鉛筆の匂いがしていた。正面の看板に、でかでかと「夢税務署」とある。「え?」と声が漏れた。受付の窓口には、...
ちいさな物語

#558 チョークの決闘線

仕事帰り、人だかりを見つけて足をとめた。チョークで書かれた円の周りに、同じく仕事帰りみたいな大人が十人ほど、距離を取って立っていた。不思議と張り詰めた空気が漂っている。「ここ、何やってるんですか」と隣の男に聞くと、男は小声で「バトル」と答え...
ちいさな物語

#546 非常階段と住民たち

地震が来たのは、夜の十時を少し回った頃だった。遅くなのにエレベーターには数人が乗り合わせていた。最初は、いつもの小さな揺れだと思った。日本は地震が多い。だが、揺れが不穏に続く。「これは大きいぞ」と、誰かがつぶやいたとき、エレベーターが停止し...
ちいさな物語

#535 ビジネスホテル奇譚

出張で地方都市のビジネスホテルに泊まった夜のことだ。エレベーターを降りると、薄暗い廊下の奥に402号室があった。――部屋の番号が不吉すぎる。4階の2号室なんて、怪談に出てきそうな部屋番号ではないか。そんなことを考えていたからだろうか、部屋に...
ちいさな物語

#533 サンドイッチの具材

僕はサンドイッチを作ろうとしていた。パンはふわふわ。レタスはしゃきしゃき。あとは何をはさむか決めるだけだ。たったそれだけ。なのに僕は、異様なほど迷っていた。ハムか。チーズか。卵か。いや、ここは豪華に全部か?しかし全部はさむとはさむというより...
ちいさな物語

#532 世界平和戦記

世界戦争が勃発した――とニュースが流れた。けれどキャスターは妙に穏やかで、画面の隅にはなぜかユーモラスな鳩のマスコットがぴょこぴょこと揺れていた。まるでホームビデオの紹介でもしているような画面だ。『速報です。ついに各国が平和的戦争に突入しま...
ちいさな物語

#523 山からなんか来た

山からなんかきた日、俺はちょうどプリンを食べていたが、そのことはこのエピソードにまったく関係ない。とにかくそれは突然、町の放送スピーカーから始まった。「えー……山から……なんか来ています。以上」以上じゃない。「なんか」ってなんなんだよ。熊か...