コメディ

ちいさな物語

#519 隣の鳩

ベランダや手すり、エアコンの室外機、その隅々まで白や灰色の斑点が散らばっている。昨日の夕方に掃除したばかりなのに、もうこんなに汚れている。「チッ……」俺は舌打ちして窓を閉めた。原因はわかっている。隣に住む、あのじじいだ。じじいのベランダには...
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#515 佐藤事変

駅前の小さな公園に、佐藤が5人そろったのは偶然だった。正確には、偶然という言葉では足りない。「必然だったけれど、理由は存在しない」という、哲学者なら小躍りしそうな種類の現象だった。最初は、ただ同じ名字の者同士(当人たちはそれを知らない)が、...
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#498 天国について

「なあ、俺にとっての天国ってなんだと思う?」朝の喫茶店で、唐突に松田が言った。俺と坂口はコーヒーを飲みかけたまま顔を見合わせた。「いや、知らんけど」「そういうのは自分で考えるもんじゃないの?」松田は深刻な顔でうなずいた。「そうだな。でも俺、...
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#489 全力バカ選手権

ことの発端は、昼休みのどうでもいい雑談だった。「人生で一番、くだらないことに本気を出したって経験ある?」営業の中村が唐突にそう言ったのだ。みんなポカンとしていたが、彼は真顔で続けた。「昨日、家のティッシュ箱の残りを何秒で引ききれるか、本気で...
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#488 給食革命〜おかしなランチ〜

月曜日の昼休み、いつもと同じ給食時間。でも、その日だけは空気が違った。「……なにこれ」俺の隣で、クラスの委員長・佐藤がスプーンを持ったまま固まっている。その日の給食のメニュー表にはこう書かれていた。【本日の献立】・ふんわりマシュマロカレー・...
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#482 かわいすぎる親友

「なあ、どう思う?」昼休み、いつものようにコンビニ弁当を食べていた俺の前に、見知らぬ女子が立っていた。いや、正確には女子じゃない。「……お前、マジで誰?」「俺だよ、健太」それを聞いた瞬間、弁当の唐揚げをのどに詰まらせた。ゴホゴホ言いながら、...
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#468 作られた呪物

「なあ、呪いのアイテム作ろうぜ」昼休み、いきなりそんなことを言い出したのは友人の小田だった。「……お前、また変な動画でも見たのか?」「違うって! 『呪物作ってみた』系の動画が流行ってんの! それで俺らもやってみようぜって」変な動画、見てるじ...
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#461 商店街サバイバルゲーム

俺たちの商店街で「サバイバルゲーム」が始まったのは、文房具店のカミさんが言い出したのがきっかけだった。「そんな喧嘩するくらいなら、いっそゲームで決めちまいな」実はうちの商店街は最近派閥争いが激化していた。二つに割れた派閥――若手派と古参派。...
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#459 スクランブル交差点のハイタッチ

聞いてくれ。渋谷スクランブル交差点で、最近とんでもない現象が起きてるんだ。俺が最初に見たのは金曜の夜だった。人混みの中、サラリーマンが突然すれ違いざまに若者とハイタッチしたんだよ。「パァン!」っていい音立ててな。で、二人とも満面の笑み。「え...
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#453 名もなき戦国武将、JKに憑く

あれは二年生の修学旅行で京都に行ったときのことなんだ。普通なら清水寺とか金閣寺とか、有名どころに行くはずでしょ? でもうちの学校はちょっと変わってて、先生が歴史マニアだったのね。だから旅程の中に「古戦場めぐり」なんていう地味ぃ〜なイベントが...