コメディ

ちいさな物語

#220 現代版・稲生物怪録

最初に部屋に現れたのは、髪の毛をだらりと垂らした若い女だった。深夜の一時、男はベッドでスマホの画面を眺めていた。部屋の隅から女が這い出し、ゆっくりと近づいてくる。だが、男はスマホをスクロールしながら、彼女にちらりと目をやっただけで呟いた。「...
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#210 究極の鼻ティッシュ選手権

ある朝、僕は唐突に鼻血を出した。それは突然で、理由もなく鼻の奥から温かい感触が流れ落ちてきたのだ。慌てて洗面所に駆け込み、急いでティッシュを取って鼻に詰め込む。鏡を見てみると、鼻から白いティッシュの塊が不格好に飛び出している。まったく美しく...
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#194 片付かない部屋

「本当に、ごめんね。たぶん、ひとりじゃ無理だと思って」そう言って僕を呼んだのは、中学時代からの同級生・美沙だった。学生時代から散らかし魔だった彼女の部屋が、どうしようもなく荒れてきたという。興味本位で訪ねたワンルームは、予想以上の惨状だった...
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#192 手袋、怒りの暴走

冬の公園のベンチに、ぽつんと落ちていた赤い手袋。それは右手だけのさみしい存在だった。「ご主人はきっとすぐに戻ってくる!」片手袋は前向きだった。だが、一日経ち、二日経ち、ついには一週間経っても、彼女の持ち主は姿を見せなかった。通りかかった老婦...
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#179 生贄募集、時給1500円〜(交通費支給)

「生贄バイト、急募。時給1500円〜。未経験歓迎」そんな求人広告を見たタケル(28・フリーター)は思った。「なんか宗教系っぽいけど、時給いいし、とりあえず応募しとくか」面接会場は宗教法人なんたらと書かれた怪しげな事務所。面接官は無言で壺を磨...
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#169 世界がゲームになった日

いつも通りの朝だったはずだ。けれど窓を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。通勤中のサラリーマン二人が突如、道端で格闘ゲームのキャラクターのように激しく殴り合い始めたのだ。「光弾拳!」ネクタイを締めた男性が叫ぶと、実際に手から光るエネ...
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#142 ぶさいく犬の幸福論

あの日、ペットショップの片隅で一匹の犬と目が合った。いや、目が合ったというより、あまりにも気になって目が離せなかった。なにせその犬はとびきりブサイクだったのだ。鼻は潰れたように低く、目は変に離れている。耳も両方が変な方向に折れていて、足の長...
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#111 致命的なタイプミス

「このキーボードは、打った言葉を現実にする」店主にそう言われて、俺は半信半疑でその黒いキーボードをながめる。古道具屋にキーボードというのがめずらしくて、俺はそれを手に取っていた。どこにでもある普通のキーボードと変わらない。ただ、モニターにつ...
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#101 チャラ神様のご加護

深夜、人気のない神社の境内。今年こそ、彼女ができますように。鳥居をくぐると、目の前にキラッキラのスーツを着た男がいた。「やっほ~☆ 君、悩みとかあんの?」「……は?」金髪オールバックにサングラス。胸元をはだけさせ、金のネックレスがジャラジャ...
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#092 言い訳の数

「被告人、あなたは万引きの罪で起訴されていますね?」裁判官の問いに、被告の男は堂々と答えた。「いえ、あれは不可抗力でした。」「不可抗力?」「そうです。ちょうどその日、私のズボンのゴムが緩んでましてね。歩いていたらスルスルっと下がってきたんで...