コメディ

ちいさな物語

#253 深夜の回転寿司屋

「駅裏にある深夜の回転寿司屋は何か変らしい」そう噂を聞きつけた僕は、金曜の夜、興味本位で閉店後の回転寿司屋を見に行ってみた。なぜか明かりがついていて、自動ドアが開いたままになっている。そっと中をのぞくと、普通に営業しているかのように明るかっ...
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#250 そ

近所のコンビニが、今朝から「そ」の位置になっていた。何が「そ」なのか最初は誰にもわからなかった。ただ、朝、コンビニに行ってみると、入り口の自動ドアの前で、店員が全員、右手を耳の横に、左足を半歩前に出し、無言で「そ」としか言いようのないポーズ...
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#248 エレベーターのボタン全部押す係

夜のマンションには謎の「ボタン全部押す係」が現れるようだ。最上階から地下まで、全部の階を律儀に巡る彼(あるいは彼女)は、一体何者なのか? そして、住人たちはなぜか誰も驚かない――。 「また全部押されてる……」 エレベーターの扉が開くと、見慣...
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#239 闇バイト始めました。

僕はバイトを探していた。スマホの求人アプリを見ても、どれもピンと来ない。そんな時、駅前の掲示板に貼られていた小さな張り紙が目に飛び込んできた。『闇バイト募集! 高収入保証! 秘密厳守!』え、闇バイト? 求人広告でそれ書いちゃってもいいの?最...
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#238 我が家の蓄財アクティビティ

「家族で沖縄旅行に行こう!」父のその一言で、私たち一家の蓄財生活が始まった。最初はただ、ありふれた旅行資金作りだった。しかし、それは予想外の盛り上がりを見せ、旅行そのものよりも貯金活動の楽しさが、家族の話題の中心となった。まず最初に決めたの...
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#236 それっぽいビジネス書の謎

「今の時代、成功したいならまず“言い回し”を身につけろ」それが最初にネットでバズった“それっぽい言葉”だった。出どころは不明。けれど、どこかで見たような内容だった。自己啓発か、ビジネス書か、あるいはどこかのインフルエンサーの切り抜きか。ただ...
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#235 いつもの

その料理が運ばれてきたのは、ちょうど僕が水を飲もうとしたときだった。木のトレイに載ったそれは、湯気を立て、甘いようで香ばしい、なんともいえない香りを漂わせていた。ふと横を見た。隣の席の中年男性が、箸を手にしていた。ゆっくりとご飯をすくい、汁...
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#228 怪談メーカー

「退屈なあなたの町にも怪談を。」そんなキャッチコピーの書かれたパッケージを、僕は手にしていた。『怪談メーカーキット』——ネット通販で見つけた怪しげな商品だ。商品紹介欄にはこうある。「設置するだけで、あなたの周囲に『それっぽい怪談』が自然発生...
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#220 現代版・稲生物怪録

最初に部屋に現れたのは、髪の毛をだらりと垂らした若い女だった。深夜の一時、男はベッドでスマホの画面を眺めていた。部屋の隅から女が這い出し、ゆっくりと近づいてくる。だが、男はスマホをスクロールしながら、彼女にちらりと目をやっただけで呟いた。「...
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#210 究極の鼻ティッシュ選手権

ある朝、僕は唐突に鼻血を出した。それは突然で、理由もなく鼻の奥から温かい感触が流れ落ちてきたのだ。慌てて洗面所に駆け込み、急いでティッシュを取って鼻に詰め込む。鏡を見てみると、鼻から白いティッシュの塊が不格好に飛び出している。まったく美しく...