日常・現代

ちいさな物語

#177 納豆の糸

納豆が好きだ。昔から毎朝、白いご飯にかけて食べるのが習慣だ。混ぜる回数はきっちり三十回と決めていて、醤油は少なめ、ネギはたっぷり。今日も同じように朝食を楽しむはずだった。その日、納豆の糸が妙に丈夫だった。器から口へ運ぶ途中で切れることなく、...
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#171 空き缶の恩返し

その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く...
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#170 地下三階

放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる...
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#167 世界中でただ一人

目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて...
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#164 終わらないエスカレーター

その日も私はいつものように駅へ向かった。改札を通り、乗り慣れたエスカレーターに足をかける。足元には、「お気をつけてご利用ください」というありふれた注意書きがある。無意識のうちに視線を下げ、ぼんやりとその文字を眺めていた。ふと、妙に長い時間エ...
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#163 そこにある道

引っ越したばかりのアパートは、静かでとても居心地が良かった。ただ一つ、部屋の真ん中を通る妙な「通り道」があることを除いて。最初に異変を感じたのは引っ越して数日後の深夜だった。寝付けずにぼんやり天井を眺めていると、ふと誰かが部屋の中を横切った...
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#162 名探偵コーディネーター

世間には数多くの名探偵がいるが、彼らが活躍できるのは偶然ではない。実は私のような、探偵が活躍できるよう事件を演出する裏方「事件コーディネーター」が活躍しているからなのだ。探偵にも色々なタイプがいる。心理戦が得意な者、緻密な科学的捜査を好む者...
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#159 友達の前世

「俺、前世の記憶があるんだ」そう言ったのは、俺の親友、大輝だった。「また適当なこと言ってんな」俺は笑いながら返したが、大輝は真顔だった。こいつはいつもふざけてばかりなのに、そのときの表情は妙に冷静で、冗談とは思えなかった。「本当だって。……...
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#158 空色の続き

「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める...
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#157 風の境界線

小学生の彩奈は、母が誕生日に買ってくれたリボンをとても気に入っていた。その日、彼女は近くの丘で一人遊びをしていたが、突然吹き抜けた風がそのリボンをさらい、空高く持ち去っていった。「あっ、待って!」彩奈はリボンを追って駆け出した。風に流される...