ファンタジー

ちいさな物語

#019 薔薇色の嘘

片田舎に佇む古びた屋敷に住むお嬢様、クラリッサは、目が見えない。彼女の目は開いているが、光も色も感じることができない。それでも、彼女の世界は鮮やかだった。執事のアルフレッドが、彼女に毎日「景色」を語ってくれるからだ。「今日は曇り空です。灰色...
ちいさな物語

#017 侍がいる

あれは3年前の秋の夜だった。残業帰りの深夜、駅前の自販機でコーヒーを買ってたんだ。ふと振り返ると、そこにいたのが、着流し姿の男だった。いや、普通の着流しじゃない。腰に刀を差して、髷を結った、まさに時代劇から飛び出してきたみたいな侍だ。俺は一...
ちいさな物語

#011 三時間だけの同窓会

ふらりと立ち寄った酒場で、見知らぬ男たちが親しげに手招きする。会ったことなどないはずなのに、胸の奥がざわついて——。
ちいさな物語

#009 透明な涙を流す獣

仕事帰り道でのことだ。急いでいる時は森の横道を通る。いつもなんてことはない田舎道なのだが、その日は違った。静寂の中、不意に低く響く鳴き声が聞こえる。見渡すと木々の間に光るものがあった。恐る恐る近づくと、そこには見たこともない生き物がいた。体...
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#001 蝶々

今思えば夢だったかもしれない話なんだけど、それでもいいかな。あれは、まだ子供のころだった。えーっと、確か夏休みが終わる頃だったと思う。私の家は田舎にあって、周りには大きな森が広がっていた。普段から森で遊ぶことが多かったんだけど、その日はちょ...