ファンタジー

ちいさな物語

#360 泥だらけの勇者

それは雨上がりの午後のことだった。村外れの道を歩いていると、急に前方の草むらからガサガサという音がして、泥だらけの男が現れた。ぼさぼさの髪、傷だらけで泥まみれの鎧、背中にはいかにも立派な剣。見た目はどう見ても冒険者……いや、それ以上の存在感...
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353 魔法少女(35)

「もう25年かぁ……」鏡の前でぼんやりと呟きながら、私はふと自分の顔を見た。10歳で魔法少女としてデビューして以来、悪の組織から地球を守るために必死に戦い続けてきたけど、気がつけば35歳。「少女」という言葉に明らかに無理を感じられる年齢に差...
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#350 今日も勇者が現れない

「魔王が復活したのに、勇者が見つからない」国王が溜息混じりに告げる言葉に、魔法使いである俺は思わず頭を抱えた。いや、それにしたって、なんで俺が行く流れになってるんだ?「申し訳ない、セオドア殿。しかし、頼めるのはそなたしかおらぬ」国王は苦々し...
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#340 正しい歴史

「じゃあ、このページを開いて。今日は江戸時代の終わりから明治時代の始まりについて勉強するぞ」歴史の授業。いつもと変わらぬ風景のはずだった。俺は教科書を開き、指定されたページを見た。——そこで、目が止まった。『江戸幕府は宇宙進出を試みたが、技...
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#332 桜憑き

満開の桜並木をぼんやりと眺めていた。風に吹かれ、花びらがひらひらと舞う姿が美しい。「綺麗だな……」呟きながら目を細めていたら、強い風が吹きつけてきて、思わず目を閉じた。次の瞬間、奇妙な感覚に襲われた。体が軽く、小さくなったような気がする。ゆ...
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#329 名探偵アリスと見えない助手

名探偵として知られるアリス・サヴォイは、普段の喧騒とは無縁の田舎の一軒家で休日を過ごしていた。事件に追われる日常を忘れるため、彼女は静寂の中に身を置くことを好んだ。だが、この静けさは彼女にとって完全な孤独ではなかった。なぜなら、彼女には「助...
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#327 赤いラインの傘

昨日の夕方のことだ。ちょっと急いでいて、コンビニの傘立てに置いておいた自分の黒い傘を慌てて掴んで帰ったんだ。家に着いて玄関で傘を開いて確かめてみて驚いたよ。僕の傘じゃなくて、よく似た赤いラインが入ったものだったんだ。「やっちゃったな」と思っ...
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#325 森の宴

森の奥で迷ったとき、遠くから楽しげな音楽が聞こえてきました。導かれるように進むと、そこには奇妙な光景が広がっていました。私はその日、特に目的もなく森を訪れただけでした。あえて言うなら、ただ日常から逃げたかったのです。しかしどこかで道を間違え...
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#320 天使がうちに降りてきた

雲間から一筋の光が降りてきたとき、なんとなく予感があったんだ。「何かが始まるな」ってね。それは、いつもの昼下がりだった。空が急に暗くなったかと思ったら、雲の隙間からまばゆい光が差し込んできた。その光の中に、何かがいた。いや、誰かと言うべきか...
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#315 魔法の使えない魔道士と飛べないドラゴン

シルグは、村一番の役立たずの魔道士だった。幼い頃から魔力の才能に乏しく、いつも魔法を失敗しては笑われ、誰からも馬鹿にされた。村の者たちは呆れて言ったものだ。「お前の魔法なんて、風に揺れる葉っぱほどの役にも立たないな」だから彼が村を飛び出し旅...