ほっこり

ちいさな物語

#094 銀色の親友

俺がそいつと出会ったのは、山道の途中だった。「おい、人間。少し手を貸せ」振り向くと、そこには二足歩行の狼がいた。いや、正確には獣人というやつだろう。狼の頭にたくましい体、しかしその毛並みは不思議なほど滑らかで、銀色に輝いていた。「……しゃべ...
ちいさな物語

#093 きみの背中

何度も同じ夢を見るようになったのは、ちょうど一年前のことだった。夢の中で、きみは僕の前を歩いている。白いワンピースの裾が、ふわりと揺れる。「待って」呼びかけても、きみは立ち止まらない。それどころか、少しずつ遠ざかっていく。僕は必死に追いかけ...
ちいさな物語

#087 祖母のわらび餅

夏になると祖母が手作りのわらび餅を作ってくれた。冷たい井戸水で締めたそれは、ぷるんと透き通り、きなこと黒蜜がたっぷりかかっていた。口に入れると、まるで澄んだ水のかたまりのように清らかな味がする。「おばあちゃんのわらび餅って、なんだか夢みたい...
ちいさな物語

#079 乙女ゲーム化した高校生活にモブの俺がツッコミ入れていきますね

「いやいや、ありえないだろ」俺は隣の席で繰り広げられる光景に、思わずツッコミを入れた。ここはごく普通の高校。そしてこの物語のヒロイン——橘ひまりは、決して”かわいい”タイプではない。見た目は普通、性格はどちらかというと生意気。気分屋の猫みた...
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#076 回転寿司と回るおじさんの幽霊

回転寿司のレーンに、おじさんが流れていた。寿司の皿に挟まれながら、妙にリラックスした顔をしている。「おっ、トロが来た!」おじさんは隣の皿からトロをつまみ、満足げに頬張った。いや、何食ってんだ。ていうか、なぜ流れてる?俺は周囲を見渡した。だが...
ちいさな物語

#074 神さまの憂鬱

町はずれの小さな神社に、野良猫がよく集まる場所があった。僕は昔からその猫たちを眺めるのが好きで、暇があればよく通っていた。今日も境内の石段に腰を下ろし、猫たちが気ままに歩き回るのを眺めていた。毛づくろいをする者、昼寝をする者、鳥を狙ってじっ...
ちいさな物語

#070 焚火の夜の奇妙な話

旅の途中、俺は森の奥の開けた場所で焚火の光を見つけた。火を囲むのは四人の旅人。見た感じ知り合い同士というよりはたまたま居合わせただけのようだった。こういう場所では野営に適した場所を取り合うか、何かの縁と割り切るかのどちらかだ。しかしこんな森...
ちいさな物語

#068 鈴の音の山

おやおや、旅の方。そんなところで立ち止まって、どうしたんだい? ん? 鈴の音? 山道を歩いていたら、鈴の音が聞こえて追いかけきた? そりゃ、変な話だねぇ。ああ、もしかして……じゃあ、ちょっと歩きがてら、ここらの話をしてやろうか。このあたりに...
SF

#067 シカですか?

「では、これが未来の移動手段となる『シカライド』です!」壇上で発表されたのは、最新型の電気自動車……ではなく、一頭の立派な鹿だった。静まり返る会場。聴衆は何かの冗談かと思い、ざわつき始める。しかしプレゼンターの科学者は至って真剣な表情だ。「...
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#064 転生! 異世界ブラック企業

目を覚ますといつもとは違うという感覚があった。「やった……ついに俺も異世界転生か!」佐藤隆司(35歳・社畜)は歓喜した。深夜残業の連続で倒れた記憶がある。ということは、とうとう神様が俺を異世界へ送ってくれたに違いない。なぜそう思うかというと...