じんとくる

ちいさな物語

#514 午後三時のカラスたち

午後三時、町のスピーカーがいつものチャイムを鳴らすと、カラスたちが電線から一斉に飛びおりた。彼らは咳払いをして、黒い嘴をそろえて前へならえをした。そして音もなく行進を始めた。誰も理由を知らなかったが、誰もがぼんやりとそれを眺めていた。人々は...
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#512 うさぎ道の迷い子

村の外れに「うさぎ道」と呼ばれる地下通路があってね、昔から大人たちは「あそこには入るな」と言っていたんだよ。土の匂いがして、ひんやりとした風が流れていてね、子どもにはたまらない秘密の場所だったんだ。その日もカズと仲間たちは探検に出ていた。と...
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#511 側溝の住人

最初にそれを見たのは、長雨があがった後の湿気の多い朝だった。通勤前に家の前を掃いていたら、足元の側溝のフタがガタリと動いた。猫でも入り込んだのかと思って覗きこむと、そこから人の頭がぬっと出てきた。「うわっ!」とのけぞった俺に何食わぬ顔で「お...
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#507 伝説の剣、しゃべります

あの日、俺は確かに死んだはずだった。それなのに――気がついたら、俺は鉄の塊になって地面に突き刺さっていた。そう。俺は一本の剣になっていた。青白く光る刃。やけにいわくありげな装飾。「おい、誰かいるか?」反射的に声を出したら、近くにいた若者が腰...
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#504 時計屋敷の夢

朝、目覚ましの音で目を覚ました。……はずだった。枕元でベルが鳴っている。だが、体が動かない。目を開けると、見慣れたはずの天井がどこか違う。薄暗い部屋。天井には煤けた模様。布団の下の感触は硬い。ベッドじゃない。古い木の寝台だった。「……夢?」...
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#503 途切れた日

その朝は、特に変わったことなんてなかった。いつも通り、7時にアラームを止め、トーストを焦がし、ニュースアプリを開きながらコーヒーをすする。ただ一つだけ違っていたのは、繁忙期のための十連勤で体がぐだぐだになっていることと、Wi-Fiの電波がや...
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#502 スパムと恋と人工知能

件名は「ご利用口座の安全確認について」だった。よくあるスパムだと思って削除しようとしたが、文末にこう書かれていた。「質問がある場合は、このメールに返信してください」その一文に、ほんの少し興味をひかれた。普通は送信専用のメールだから返信するな...
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#495 ホワイト企業に囚われて

父の借金のかたに連れていかれたのは、雨の夜のことだった。黒いスーツの男たちが玄関を叩く。怯える私の手を強引に引き、「お嬢さん、こちらへ」と有無を言わせぬ口調で口調で言った。そのとき父は居間の隅で震えていた。「すまない……お前まで巻き込むなん...
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#493 山の神の約束

この里には『白霧の峰』という山があってな、そこは神さまの棲む山ゆえ、決して鉄を持ち込んではならん、という掟があったんじゃ。けれどその年は雪が深うて、獲物もおらず、里の者は飢えておった。与作の妻は腹に子を宿しておったし、与作もとうとう我慢がな...
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#491 喫茶店のノート

あのノートのこと、話したっけ。あれは、三年前の秋のことだった。仕事帰りにたまに寄っていた古い喫茶店があってね。「カフェ・コトリ」って名前だったんだけど、看板の文字はかすれて、扉のベルも半分壊れてるような、こういっちゃなんだけど、うらびれたよ...