くすっと笑える

ちいさな物語

#384 しおちゃんと僕

しおちゃんこと、間宮栞のことを説明するのは、本当に難しい。小さい頃から一緒で、僕にとっては当たり前の存在だった。けれど、他人から見たら、彼女は「びっくりするほど綺麗で、びっくりするほど性格が悪い女の子」だ。あれほど両極端な人間は、たぶんそう...
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#382 月見の夜の奇妙な話

正直、この話は今でもちょっと自分でも信じられないんだ。あれは僕がまだ高校生だった頃の秋の夜。中秋の名月が近いってことで、友達のカズとケンジと三人で、「今年はちゃんと月見でもしようぜ」と話していたんだ。けど、僕らはどちらかというと、真面目に団...
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#379 虚無ガチ勢の夏

「ガチ勢」って言葉、最近よく聞くだろう?どんな趣味でも、必ずガチな人がいる。釣りガチ勢、アイドル追っかけガチ勢、猫吸いガチ勢、断捨離ガチ勢。だが、僕の隣に住んでいたあの人は一味違った。「俺は虚無ガチ勢だ」と堂々と名乗るその男、村瀬さん。最初...
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#364 放課後の消失点

夕陽が校舎を赤く染める頃、私はひとり屋上のフェンスに寄りかかっていた。風は冷たく肌を刺すようだった。何もかもが微妙にズレてうまくいかない。クラスのいじめを傍観している。成績は中の中から上がりも下がりもしない。部活動も楽しいとは思えない。友達...
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#363 朝活のテーマ

朝5時、都内のとあるカフェ――。夜明け前の静寂を破るべく、今日も「意識高すぎるサラリーマン」たちがぞろぞろとやって来る。スーツ、MacBook、論文プリント、手描き図解、タブレット端末、プロテインのボトル。「おはようございます、今日も『朝』...
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#360 泥だらけの勇者

それは雨上がりの午後のことだった。村外れの道を歩いていると、急に前方の草むらからガサガサという音がして、泥だらけの男が現れた。ぼさぼさの髪、傷だらけで泥まみれの鎧、背中にはいかにも立派な剣。見た目はどう見ても冒険者……いや、それ以上の存在感...
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#358 コンビニ夜勤は満員御礼

「夜勤って静かで楽だよ」バイト初日にそう言い切った先輩の顔を思い出しながら、タケダはため息をついた。現在、午前0時3分。商店街の端っこにある我らがコンビニ「まるまるマート」。世の中のほとんどが寝静まるこの時間、なぜかこの店だけは常連たちのア...
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#355 誰も知らない

「なあ、これ見てみろよ」俺たちはスマホの画面を順番に覗き込んだ。山奥のキャンプ場の写真。週末に集まれるメンバーで遊びに行った。社会人になっても続く数人のグループで、たまには自然に触れようと計画した、いつもの遊びの延長。それには確か五人で行っ...
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#351 記憶のスープ

閉店間際の店に、ずぶ濡れの男が飛び込んできたんだ。ボロボロのスーツなのに妙に穏やかな笑み――あんな客、初めてだったよ。その日は特に客足も少なく、雨も強くなってきたから、早めに店を閉めようと思って、外の看板を片付けようとしたその時だった。ガラ...
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#350 今日も勇者が現れない

「魔王が復活したのに、勇者が見つからない」国王が溜息混じりに告げる言葉に、魔法使いである俺は思わず頭を抱えた。いや、それにしたって、なんで俺が行く流れになってるんだ?「申し訳ない、セオドア殿。しかし、頼めるのはそなたしかおらぬ」国王は苦々し...