寝る前に

ちいさな物語

#447 街灯の下の影

街灯がともる、その一瞬だけ。光の輪の中に、いつも誰かが立っている。一度見た者は、何度でも見てしまう。
ちいさな物語

#446 セルフ化社会

あんたは最近「セルフ〇〇」ってやつをよく聞くと思わないか?セルフレジ、セルフ脱毛、QRコードでセルフ注文するカフェ……最初はその程度だった。人件費削減だの効率化だの言われて、「自分でやる方が早い」って便利がられていた。でもな、気がついたら街...
ちいさな物語

#442 異世界ニートの変わらぬ日々

あのとき確かに僕は死んだんです。過労死とかじゃなく、ただ家の階段を踏み外して頭を打った。ニュースにもならないような凡庸な死に方でした。そして気づけば光の中にいて、「あなたを異世界に転生させます」という声を聞いたんです。「よし来た!ついに僕の...
ちいさな物語

#438 神様のお気に入り

それはある日の朝のことでした。目を覚ますと、枕元に白い封筒が置かれていたんです。僕は一人暮らしで、鍵もかけている。誰かが忍び込んだ気配もない。気味が悪く思いながら開けてみると、こう書かれていました。――おめでとうございます。あなたは「神様の...
ちいさな物語

#436 不思議な旅の教訓

ひとつの不思議な旅の話を聞かせましょう。あるところに三人の冒険者がいました。けれども彼らは出会ったことがない。互いの顔も名も知らず、それどころか存在すら知りません。一番目の冒険者は、若い剣士でした。彼は古い文献に記された「封印の遺跡」を目指...
ちいさな物語

#434 川の大橋ものがたり

むかしむかし、とある里に大きな川が流れておった。その川は流れも早く、雨が降ればすぐに氾濫して、里の人々はたびたび困らされていた。とりわけ川を渡るのが大変でな、舟を使えば流され、泳げば命を落とす。里と里とをつなぐ道はその川でぷつりと途切れてお...
ちいさな物語

#430 銀杏並木の迷路

仕事帰り、ふと遠回りしたくなった。駅までの道を逸れて、人気の少ない路地に足を踏み入れた。その先に銀杏並木が広がっている。それは、どこかの有名な観光地みたいに見事な並木道。けれど、人も車もない。まるで世界から切り離されているような静けさだった...
ちいさな物語

#424 立会人

立会人という人を、あなたは聞いたことがあるだろうか。それは奇妙な仕事をする人だ。特別何かをするわけではない。ただ立ち会う。受験の合格発表を見に行くとき、初めて入る店の敷居をまたぐとき、夫婦喧嘩や遺産相続の話し合いにすら。彼はただそこにいて、...
ちいさな物語

#423 五つの宝と姉弟の旅

今でもあの旅を思い出すと、胸が熱くなるんです。まだ僕と姉が若かった頃の話です。「世界に散らばる五つの宝を集めれば、どんな願いも叶う」――そんな古い伝承を聞いたことがあるでしょう?僕らは、その宝を探す旅に出たんです。理由は単純でした。姉は幼い...
SF

#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...