寝る前に

ちいさな物語

#434 川の大橋ものがたり

むかしむかし、とある里に大きな川が流れておった。その川は流れも早く、雨が降ればすぐに氾濫して、里の人々はたびたび困らされていた。とりわけ川を渡るのが大変でな、舟を使えば流され、泳げば命を落とす。里と里とをつなぐ道はその川でぷつりと途切れてお...
ちいさな物語

#430 銀杏並木の迷路

仕事帰り、ふと遠回りしたくなった。駅までの道を逸れて、人気の少ない路地に足を踏み入れた。その先に銀杏並木が広がっている。それは、どこかの有名な観光地みたいに見事な並木道。けれど、人も車もない。まるで世界から切り離されているような静けさだった...
ちいさな物語

#424 立会人

立会人という人を、あなたは聞いたことがあるだろうか。それは奇妙な仕事をする人だ。特別何かをするわけではない。ただ立ち会う。受験の合格発表を見に行くとき、初めて入る店の敷居をまたぐとき、夫婦喧嘩や遺産相続の話し合いにすら。彼はただそこにいて、...
ちいさな物語

#423 五つの宝と姉弟の旅

今でもあの旅を思い出すと、胸が熱くなるんです。まだ僕と姉が若かった頃の話です。「世界に散らばる五つの宝を集めれば、どんな願いも叶う」――そんな古い伝承を聞いたことがあるでしょう?僕らは、その宝を探す旅に出たんです。理由は単純でした。姉は幼い...
SF

#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
ちいさな物語

#414 白い回廊の夢

昼寝をすると、決まって同じ夢を見る。どこまでも続く白い回廊。高い天井には巨大なステンドグラスがはめ込まれ、そこから淡い光が差し込んでいる。夢の中の僕は、その回廊を歩いている。最初は何もなかった。ただ、歩き続けるだけだった。しかし、ある日を境...
ちいさな物語

#410 ファンタジー世界の名探偵

俺の職業は「名探偵」だ。ファンタジー世界では、普通は戦士とか魔法使いとか僧侶とか、そういう職業を名乗る。ところが俺の場合、なぜか職業欄に「名探偵」と書かれていた。最初は笑い者だったよ。「なんだよそれ、ただの冷やかしじゃないか」「モンスター相...
SF

#404 最後の告白

夜風が静かに吹く中、私は公園のベンチに座っていた。隣には彩花がいる。彼女とは幼い頃からの親友だ。何でも話せる関係だと思っていた――いや、本当はずっと隠していた。「何? こんな夜中に呼び出して。何かあった?」彩花が首を傾げる。彼女の声があまり...
ちいさな物語

#402 戦場の絵の具

少年がそれを拾ったのは、戦場の外れだった。瓦礫と灰に覆われた大地の隅、泥に半分埋もれるようにして転がっていた古びた木箱。蓋を開けると、中には色あせた絵の具が並んでいた。赤、青、緑、黒。ただそれだけ。しかし、どの色も普通の絵の具とは違う、奇妙...
ちいさな物語

#401 秘密戦隊父と母

押入れの掃除なんて、正直気が進まなかった。古い布団やら黄ばんだ雑誌やら、どうせガラクタばかりで大変なのは目に見えていた。ただ、捨てられない大量のマンガ本をしまう場所がほしいと言ったら、押入れを片付けたら、空いたスペースを使っていいと言われた...