日常・現代

ちいさな物語

#234 はないちもんめ

「かってうれしい はないちもんめ まけてくやしい はないちもんめ」その歌は、ある日、世界中で流れはじめた。テレビでも、スマートスピーカーでも、コンビニのBGMでも。誰もがどこかで聞いたことのある童謡。でも、それが“合図”だとは、最初は誰も気...
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#233 我は自販機、ここに在り

私は、ここにいる。設置されたのはたぶん、もう何十年かは前になる。地下鉄の三番線ホーム、柱の陰。少し視界が悪いが、それでも人の流れはよく見える。私は——自動販売機。古めかしい外観に、ガタガタと音を立てて働く中身。ジュース、コーヒー、水、たまに...
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#229 愛なき者

朝、目覚めたとき、部屋の空気が少し違っていた。テレビをつけるとニュースキャスターがにこやかに言っていた。「おはようございます。愛しています」それを受けて、司会者、ゲストらしき人々も次々に「おはようございます。愛しています」、「愛しています」...
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#224 水曜日だけの魔法使い

僕の能力は週に一度、水曜日にだけ使える。名前は『ウィークデイ・ウィザード』。中二病全開の名前だが、実際のところ、あまり役に立つ能力ではない。月曜や火曜に襲われても何もできないし、木曜や金曜に困っている人に出会っても、助けることすらできない。...
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#222 空間のひずみに落ちた人たち

「ここは空間のひずみに落ちた人たちが、とりあえず集まる場所です」目を覚ましたとき、私は灰色の部屋のソファに座っていた。目の前に座る男性が穏やかな口調で告げた。彼は上品なスーツを着て、眼鏡越しの瞳は優しく輝いている。「空間のひずみ……って?」...
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#221 ループしている

「さっきもここ通らなかったか?」時計は23時を回っていた。繁忙期の残業を終え、フロアの電気を落として帰ろうとしたとき、ふと気まぐれで非常階段の方へ回る。しかし階段の扉は開かなかった。不審に思いながら廊下を戻ると、見慣れた観葉植物と給湯室がま...
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#216 あの角を曲がると、自販機がある

その自販機は、決まって夜中の二時過ぎにしか現れない。駅から少し離れた住宅街の裏路地。昼間に歩いても、そこに自販機などない。ただのブロック塀と、ゴミ集積所と、草の伸びた空き地があるだけだ。だが、ある夜、私は残業帰りにその道を通った。ふと、曲が...
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#215 額の刃

この町の人々は、めったに怒らない。満員電車で押されても、店員に無視されても、上司に理不尽なことを言われても、口元をひきつらせて、じっと堪える。なぜなら、「キレる」と、額が割れるのだ。バカな話のように聞こえるが、実際にそうなる。ひび割れた額の...
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#209 殺人犯の声

その能力に気づいたのは、駅のホームだった。残暑の厳しい日差しの中、僕は自動販売機でコカ・コーラのペットボトルを買った。シュッと開けた蓋の音と共に、炭酸が弾ける音が心地よく耳に響いた。「……電車遅いな、また遅刻しちゃうよ」誰かが呟く声が聞こえ...
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#208 約束の庭

午後三時、町外れの公園は、夏の匂いに包まれていた。僕は汗ばむ手のひらでサッカーボールを拾い上げ、適当に芝生に向かって蹴り戻した――つもりだった。乾いた音とともに、ボールは明後日の方向に飛んでゆく。「取ってこいよ!」友達が冗談まじりに叫ぶ。「...