ファンタジー

ちいさな物語

#573 忘れられた場所

王都へ向かうため、私は日暮れの乗合馬車に乗った。地図師ギルドの見習いになったばかりで、胸の中はやる気よりも、失敗して笑われた記憶のほうでいっぱいだ。馬車は古く、扉には消えかけた紋章があり、御者は深く頭巾をかぶって顔を見せない。青いランタンが...
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#566 叶えるお守り

駅から坂を十分ほど上ると、杉木立に囲まれた小さな神社が現れた。鳥居の横の掲示板には、地元の祭りの案内と「清らかな心」という墨書が貼られている。いかにも地域に密着した小さな神社という感じだ。僕の聞いた噂は本当なのだろうか。鳥居をくぐって進むと...
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#562 まずは気軽な散歩から

運動不足を解消しようと思って、僕はスマホに散歩アプリを入れた。歩数を数えて、歩いた距離でレベルが上がり、バッジがもらえる。ただそれだけの、よくある健康系アプリだ。最初の数日は楽しかった。近所の川沿いを歩くと「散歩レベル2」「健康に一歩近づき...
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#549 何もできない彼女と僕の旅

僕はだいたい何でもできた。剣も振れるし、魔法も使える。地図を読めば迷わないし、罠も見抜ける。料理も、裁縫も、交渉も、計算も、それなり以上にこなせる。できないことも少しやってみれば、すぐにできるようになった。ところが彼女は違った。剣は持てない...
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#547 足がもつれて魔王城を制圧してしまいました

「あ、やべっ」それが、世界が救われた瞬間に発せられた声だった。場所は深夜の魔王城の最上階、「玉座の間」。魔族の皆様がぐっすりとお休みになられている間に、フローリングのワックスがけを終わらせる。それが、派遣清掃員である僕、テンタの任務だった。...
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#545 電子の魔女

魔女なんて、科学技術が発展したこの現代にいるわけないだろ。仕事帰りに立ち寄ったカフェで、俺がそう言うと、彼女はスマホを触りながら小さく笑った。「魔女だって現代は電子機器を使いこなすわ」彼女は顔も上げず、スマートフォンの画面を指でなぞりながら...
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#528 異世界ツアー案内人

あ、どうも。僕は異世界旅行社の添乗員をやってる者です。正式名称は「時空観光案内人」。担当はファンタジー世界。だけどまあ、だいたいの人は「ガイドの人」といったらわかりますかね。仕事の内容?一言で言えば、別世界へ行きたい人たちを連れて、安全(※...
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#527 喫茶メルヘン堂

駅前の大型ショッピングモールから少し離れた路地に、「喫茶メルヘン堂」という店がある。昭和のまま時間が止まったような喫茶店で、看板は色あせ、ドアはきしみ、テーブルは小さくて、椅子は座るたびにミシッと悲鳴をあげる。初めてその店を見かけたとき僕は...
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#526 アニマルファンタジー

登山を決行した朝は、ひんやりした空気に満ちていた。俺たち四人は久しぶりに会って、楽しく山を登っていた。大学で出会い、サークル活動を通して仲良くなり、長い時間を一緒に過ごした四人組。就職して半年、ようやく予定が合って登山の計画を立てることが出...
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#509 鏡の裏の王国

朝起きて、顔を洗おうとしたら、鏡の中に街が映っていた。最初は、まだ寝ぼけているんだろうと思って、たいして気に留めなかった。だが、しばらく経ってからまた見てみると、そこにまだ街がある。小さな家々が立ち並び、塔のような建物の上で風車が回っている...