ファンタジー

ちいさな物語

#507 伝説の剣、しゃべります

あの日、俺は確かに死んだはずだった。それなのに――気がついたら、俺は鉄の塊になって地面に突き刺さっていた。そう。俺は一本の剣になっていた。青白く光る刃。やけにいわくありげな装飾。「おい、誰かいるか?」反射的に声を出したら、近くにいた若者が腰...
ちいさな物語

#505 巨人の肩

あれはもう十年以上前のことだ。俺とカイルはまだ少年で、夢と好奇心ばかりを追っていた。村の北の森の奥に、巨大な人の形をした岩があることは、誰もが知っていた。「巨人の遺骸だ」「いや、古代の神が化けた石像だ」「中には財宝がある」そんな噂ばかりが広...
ちいさな物語

#499 影を狩る者たち

俺の名前はリアン。ここでは、俺のような人間を「狩人」と呼ぶ。ただし獣ではなく、森の化物を狩るための狩人だ。この村では、人が生まれると同じ日に犬が一匹生まれる。生まれた人と犬は対(つい)と呼ばれ、どちらかが死ねば、もう一方も同時に死ぬ。だから...
異世界の話

#485 小さな光の魔法

この魔法は本当にくだらない。指をパチンと鳴らせば小さな光が灯る。ただそれだけ。熱もないし、眩しさもない。道を照らすにも弱すぎる。見せても笑われるだけだ。手品の一種だと思われているみたいだが、手品にしても地味極まりない。「そんな魔法、ホタルの...
ちいさな物語

#475 ツッコミは2秒以内

勇者として選ばれたとき、正直、少しだけ泣いた。幼い頃からの夢だったからだ。剣に選ばれ、神託を受け、命に代えても魔王を倒す。それが俺の運命――のはずだった。しかし、初めて仲間と顔を合わせた瞬間、これまでゆるぎなかった自分の運命に疑問を抱いた。...
ちいさな物語

#474 トンネルの中

その子に出会ったのは、本当に偶然だった。あの日、僕は出張帰りで、地方のローカル線の無人駅に降りた。帰りのバスまで時間があって、少し散歩でもしようと駅前の坂道を登っていたときだ。人通りなんてまったくない。途中の古びた案内板には、「隣町へ通じる...
ちいさな物語

#470 師匠と歩いた五日間

「師匠、さっきも休憩しましたよね?」「うん、したね。でも、また休憩したくなったんだ」いつも通りの返答だった。私は深くため息をついた。私の師匠、フェルディナント・エイグルは、王都でも名の知れた魔法使いだ。いや、一応はそう呼ばれているが、実際は...
ちいさな物語

#469 私は神様

最初にその地図を描いたのは、退屈な授業中だった。私はノートの端に自分だけの地図を描いて遊んでいた。丸い半島、曲がりくねった川、中央に大きな山脈。なんとなく名前もつけた。「レムリア大陸」。それはその時間だけの遊びのはずだった。でも、次の日、ノ...
ちいさな物語

#467 異世界転移! 防災リュックの中身がチート級で楽勝?

会社の防災訓練。たったそれだけのはずだった。なのに、今俺は剣を握りしめ、火を吐くトカゲみたいな魔物に囲まれている。——なぜこうなったのか。話せば長い。その朝、課長が妙に面倒くさそうに言った。「今日、防災訓練。各部署から一名ずつ参加……だそう...
ちいさな物語

#464 神様の同居人

あの日、俺は神様に出会った。帰り道、駅前の公園で見かけたボロボロの男がいた。汚れた着物に裸足、白い髪は乱れ、目の焦点が合っていない。手には段ボールの札があり、こう書かれていた。「信仰をください」初めは、ただの浮浪者だと思った。だが、彼のいる...