ファンタジー

ちいさな物語

#286 保留音の向こう側

「少々お待ちください」取引先の受付の女性にそう言われ、俺は電話の受話器を肩に挟んだまま、机の上の資料をめくっていた。特別なことではない。電話越しには、よくある電子音のメロディが流れている。月曜の午後、少し眠い頭で、ついBGMのように流してい...
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#276 笑う城

深い森の奥、鬱蒼とした樹々の向こうに、古びた城がひっそりと佇んでいる。 その城は数百年前に滅んだ王国の遺物であり、地元の人々からは不吉な噂が絶えなかった。噂の内容はこうだ。城に入った者はみな、不思議な『笑い声』を聞くという。壁が、床が、天井...
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#275 側溝の小人

通学路の途中で、ふと小さな声を耳にした気がして立ち止まった。「あの……ちょっと、助けていただけませんか?」周囲を見回したが誰もいない。気のせいかと思いかけたが、再びか細い声が聞こえた。「ここですよ、ここ!」声は僕の足元から聞こえていた。側溝...
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#273 風紋の骨笛

山岳の夕暮れ、言葉の通じない少女を拾った。骨笛と仕草だけが僕らをつなぐ――
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#271 風の旅路

「どうして私がこんな無計画な男と旅をする羽目になったのだろう」魔道士エルドは深いため息をついた。彼の前で陽気にリュートをかき鳴らしているのは、楽士のジーノ。天性の放浪者である彼は、旅する町々で歌と酒を楽しみながら自由気ままに生きている。一方...
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#266 虹を捨てる場所

「消えた虹は、どこへ行くんだろう?」少女のふとした疑問が、森の奥のふしぎな場所へ導いていく。
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#245 金魚すくいと約束

その夏、私は友人とふたり、町はずれの小さな神社で開かれる夏祭りに出かけた。屋台が並び、浴衣姿の人波がざわめく。けれど私たちの目的は、毎年この祭りにだけ現れるという“幻の夜店”だった。「今年こそ、見つけたいね」そう言って、友人の茜は私の手を引...
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#232 午後三時のミルククラウン

午後三時になると、甘い香りが部屋いっぱいに漂う。最初に気づいたのは、休日の午後だった。 ちょうどコーヒーを淹れながら、冷蔵庫にあったプリンを食べようとした瞬間、背後から声がした。「こんにちは、おやつの精霊です!」振り返ると、そこには紅茶色の...
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#231 水曜日のポケット

「水曜日のポケットには、ちょっとした秘密があるのよ」そう言ったのは、祖母だった。わたしがまだ小学四年生だったころのことだ。祖母とわたしは、古い町にある小さな洋館にふたりで暮らしていた。町の人たちはみんなやさしく、毎日がのどかで、でもすこし退...
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#230 転生したらパーティにコンビニ店員がいた件

「転生です、おめでとうございます」白い空間で、ローブ姿の女神らしき人がそう告げた。よくある異世界転生モノだ。事故で命を落とした僕は、第二の人生を歩むらしい。「ではスキルを選んでください。剣? 魔法? 錬金術? 他に希望があれば、対応できるか...