ほっこり

SF

#255 幸福化社会にて、鳥は歌わず

働かなくていい。食事も、運動も、睡眠すらも必要ない。人工代謝調整、神経伝達最適化、精神恒常性維持装置。技術の進歩によって人間の「必要」はすべて満たされた。娯楽は無限、痛みは除去され、争いも淘汰された。幸福化と名付けられたこの新しい時代の到来...
ちいさな物語

#253 深夜の回転寿司屋

「駅裏にある深夜の回転寿司屋は何か変らしい」そう噂を聞きつけた僕は、金曜の夜、興味本位で閉店後の回転寿司屋を見に行ってみた。なぜか明かりがついていて、自動ドアが開いたままになっている。そっと中をのぞくと、普通に営業しているかのように明るかっ...
ちいさな物語

#243 小石のバトン

それはただの、小石だった。歩道に落ちた、丸く削られた白い小石。加工されたものであることは一目瞭然。どこかの敷地に敷き詰められていたものを、子どもが拾って遊んでいたのだろう。通行人が意図せずそれを蹴飛ばし、転がった先は、都内の静かな住宅街の交...
ちいさな物語

#239 闇バイト始めました。

僕はバイトを探していた。スマホの求人アプリを見ても、どれもピンと来ない。そんな時、駅前の掲示板に貼られていた小さな張り紙が目に飛び込んできた。『闇バイト募集! 高収入保証! 秘密厳守!』え、闇バイト? 求人広告でそれ書いちゃってもいいの?最...
ちいさな物語

#232 午後三時のミルククラウン

午後三時になると、甘い香りが部屋いっぱいに漂う。最初に気づいたのは、休日の午後だった。 ちょうどコーヒーを淹れながら、冷蔵庫にあったプリンを食べようとした瞬間、背後から声がした。「こんにちは、おやつの精霊です!」振り返ると、そこには紅茶色の...
ちいさな物語

#231 水曜日のポケット

「水曜日のポケットには、ちょっとした秘密があるのよ」そう言ったのは、祖母だった。わたしがまだ小学四年生だったころのことだ。祖母とわたしは、古い町にある小さな洋館にふたりで暮らしていた。町の人たちはみんなやさしく、毎日がのどかで、でもすこし退...
ちいさな物語

#229 愛なき者

朝、目覚めたとき、部屋の空気が少し違っていた。テレビをつけるとニュースキャスターがにこやかに言っていた。「おはようございます。愛しています」それを受けて、司会者、ゲストらしき人々も次々に「おはようございます。愛しています」、「愛しています」...
ちいさな物語

#227 うちの神様が一番かわいい

実家の神社に帰省すると、祭壇に手のひらサイズの神様がいた。尊大だけど、ちょっと頼りない神様との交流。
SF

#226 ほしから来たひと

あんたに話しておこうかね。この村の話さ。もう、誰も覚えていないかもしれんけど、あたしゃちゃんと見たんだよ。忘れるもんかい、あんな人。あれは、わしがまだ小娘だったころ――そうさね、戦のあとで、村にもやっと灯りが戻ってきたころだよ。ある晩、山の...
ちいさな物語

#225 狐面売りの男

祭りの夜は、人々が浮かれているせいか、普段とは違った空気が漂っている。夏の生温かい風に乗って、屋台から流れてくる甘ったるいベビーカステラの匂いやイカ焼きの香ばしい匂いが鼻をくすぐった。僕はひとりで、人混みの隙間を縫うように歩いていた。毎年こ...