ほっこり

ちいさな物語

#499 影を狩る者たち

俺の名前はリアン。ここでは、俺のような人間を「狩人」と呼ぶ。ただし獣ではなく、森の化物を狩るための狩人だ。この村では、人が生まれると同じ日に犬が一匹生まれる。生まれた人と犬は対(つい)と呼ばれ、どちらかが死ねば、もう一方も同時に死ぬ。だから...
ちいさな物語

#498 天国について

「なあ、俺にとっての天国ってなんだと思う?」朝の喫茶店で、唐突に松田が言った。俺と坂口はコーヒーを飲みかけたまま顔を見合わせた。「いや、知らんけど」「そういうのは自分で考えるもんじゃないの?」松田は深刻な顔でうなずいた。「そうだな。でも俺、...
ちいさな物語

#497 春と秋の旅

ある年の冬、空がやけに静かで、雪の粒が音もなく降りつづいていた。春の神と秋の神は、久しぶりに顔を合わせていた。春は淡い桃色の衣をまとい、いつもどこか浮かれている。秋は深い金茶の外套を羽織り、落ち着いた眼をしていた。春が言った。「ねえ、秋。ぼ...
ちいさな物語

#496 灰の夜

あれは、北の街道を歩いていたときのことだった。霧が濃く、馬の蹄の音が霞の中に吸い込まれていくような夜だった。宿を探しているうちに道を外れ、気づけば森の中にいた。ふと視界の奥に明かりが見えた。揺らめく何かの光。あんなところに何かあっただろうか...
ちいさな物語

#493 山の神の約束

この里には『白霧の峰』という山があってな、そこは神さまの棲む山ゆえ、決して鉄を持ち込んではならん、という掟があったんじゃ。けれどその年は雪が深うて、獲物もおらず、里の者は飢えておった。与作の妻は腹に子を宿しておったし、与作もとうとう我慢がな...
ちいさな物語

#491 喫茶店のノート

あのノートのこと、話したっけ。あれは、三年前の秋のことだった。仕事帰りにたまに寄っていた古い喫茶店があってね。「カフェ・コトリ」って名前だったんだけど、看板の文字はかすれて、扉のベルも半分壊れてるような、こういっちゃなんだけど、うらびれたよ...
ちいさな物語

#488 給食革命〜おかしなランチ〜

月曜日の昼休み、いつもと同じ給食時間。でも、その日だけは空気が違った。「……なにこれ」俺の隣で、クラスの委員長・佐藤がスプーンを持ったまま固まっている。その日の給食のメニュー表にはこう書かれていた。【本日の献立】・ふんわりマシュマロカレー・...
ちいさな物語

#487 絵本の扉をくぐる子どもたち

放課後の図書館は、いつも少し埃っぽい匂いがした。窓から差しこむ夕陽が、木の床をオレンジ色に染める。その日、四人の子どもたちは誰も開けたことのない本棚の前に立っていた。鍵のかかった扉が、なぜか少し開いていたのだ。「ねえ、これ、ずっと閉まってた...
SF

#486 転校生の秘密

あの日、教室のドアが開いた瞬間、空気が変わった。転校生の悠木さん。その瞬間、ざわめきすら止まったのを覚えている。誰もが彼女を見た。息をのむような美しさというやつだ。黒くてまっすぐな髪。光を吸い込むような瞳。ただの高校生とは思えない、異様な静...
異世界の話

#485 小さな光の魔法

この魔法は本当にくだらない。指をパチンと鳴らせば小さな光が灯る。ただそれだけ。熱もないし、眩しさもない。道を照らすにも弱すぎる。見せても笑われるだけだ。手品の一種だと思われているみたいだが、手品にしても地味極まりない。「そんな魔法、ホタルの...