ほっこり

ちいさな物語

#423 五つの宝と姉弟の旅

今でもあの旅を思い出すと、胸が熱くなるんです。まだ僕と姉が若かった頃の話です。「世界に散らばる五つの宝を集めれば、どんな願いも叶う」――そんな古い伝承を聞いたことがあるでしょう?僕らは、その宝を探す旅に出たんです。理由は単純でした。姉は幼い...
ちいさな物語

#410 ファンタジー世界の名探偵

俺の職業は「名探偵」だ。ファンタジー世界では、普通は戦士とか魔法使いとか僧侶とか、そういう職業を名乗る。ところが俺の場合、なぜか職業欄に「名探偵」と書かれていた。最初は笑い者だったよ。「なんだよそれ、ただの冷やかしじゃないか」「モンスター相...
ちいさな物語

#408 隣のデスクの男

「え、なんか……全然知らないやつが僕の席のとなりにいるんだけど?」これが、僕が最初に思ったことだった。月曜日の朝。カフェインとエナジードリンクのダブルパンチで無理やり目を開かせて出社した。いつものように自分のデスクに座ろうとしたとき、違和感...
SF

#404 最後の告白

夜風が静かに吹く中、私は公園のベンチに座っていた。隣には彩花がいる。彼女とは幼い頃からの親友だ。何でも話せる関係だと思っていた――いや、本当はずっと隠していた。「何? こんな夜中に呼び出して。何かあった?」彩花が首を傾げる。彼女の声があまり...
ちいさな物語

#401 秘密戦隊父と母

押入れの掃除なんて、正直気が進まなかった。古い布団やら黄ばんだ雑誌やら、どうせガラクタばかりで大変なのは目に見えていた。ただ、捨てられない大量のマンガ本をしまう場所がほしいと言ったら、押入れを片付けたら、空いたスペースを使っていいと言われた...
ちいさな物語

#396 あのとき出会った子供

あれはもう何年も前の話になるな。俺がまだ駆け出しの冒険者だった頃、仲間と共に異世界の荒野を旅していたときのことだ。ある街道沿いの村に立ち寄ったとき、ひょっこり顔を出した子供がいた。
年の頃は十歳くらいだろうか。痩せぎすで、けれど目が妙に澄ん...
ちいさな物語

#391 宝石の森

森の奥深く、人の足がほとんど入らぬ場所に、奇妙な噂がある。木々の葉も枝も幹も、すべてが宝石でできた森があるというのだ。宝石の森――そう呼ばれていた。 それは、かつて旅の商人から聞いた話だった。最初は笑い飛ばした。宝石の森などあるものかと。だ...
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#380 あざらしからの残暑見舞い

今年の夏はやけに暑かった。八月の終わりになっても、蝉の声は止まず、夜になってもまとわりつくような湿気が抜けない。僕の住むアパートの郵便受けには、町内会の回覧板や広告しか入らないのが普通だ。だけど、あの日は違った。ポストを開けると、見慣れない...
ちいさな物語

#378 走馬灯の編集はじめました

正直に言うと、自分が死ぬのがあんなにあっけないとは思わなかった。朝、餅を食べながらスマホで面白動画を見ていて、思いっきり笑った瞬間、餅が喉に詰まってそのまま──という間抜けな最期だった。さすが日本で最も人を殺している食べ物だ。まだそこそこ若...
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#376 夏空を渡るクジラ

今年の夏は、どうにも蒸し暑くて、毎日が退屈だった。セミの声ばかりが響く昼下がり、僕は屋上で空を眺めていた。団地の屋上は子供たちの秘密基地だったけれど、このごろは飽きてしまったのか誰も来ない。僕は寝転がって雲を見ていた。白い雲の切れ間に、ぽっ...