ほっこり

ちいさな物語

#358 コンビニ夜勤は満員御礼

「夜勤って静かで楽だよ」バイト初日にそう言い切った先輩の顔を思い出しながら、タケダはため息をついた。現在、午前0時3分。商店街の端っこにある我らがコンビニ「まるまるマート」。世の中のほとんどが寝静まるこの時間、なぜかこの店だけは常連たちのア...
ちいさな物語

353 魔法少女(35)

「もう25年かぁ……」鏡の前でぼんやりと呟きながら、私はふと自分の顔を見た。10歳で魔法少女としてデビューして以来、悪の組織から地球を守るために必死に戦い続けてきたけど、気がつけば35歳。「少女」という言葉に明らかに無理を感じられる年齢に差...
SF

#352 忘れられたロボット

宇宙の片隅に、ひっそりと漂う古い宇宙ステーションがあった。そこにはたった1台のロボットが、長い時間をひとりで過ごしていた。ロボットの名はエル。人類が宇宙に進出し始めた頃に作られた、初期型の人工知能搭載ロボットだった。エルには重要な任務があっ...
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#351 記憶のスープ

閉店間際の店に、ずぶ濡れの男が飛び込んできたんだ。ボロボロのスーツなのに妙に穏やかな笑み――あんな客、初めてだったよ。その日は特に客足も少なく、雨も強くなってきたから、早めに店を閉めようと思って、外の看板を片付けようとしたその時だった。ガラ...
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#349 恋愛マスターの真実

「恋愛ってのはさ、駆け引きがすべてなんだよ」また始まった。友人同士で恋愛話に花を咲かせていると、必ずどこからともなく割り込んでくる男、篠原。自称・恋愛マスターの彼は、毎度のごとく偉そうな口調で恋愛を語り出すのだが、友人の誰もまともに耳を傾け...
SF

#348 不幸を願う幸福の手紙

その奇妙な「不幸の手紙」は、ある朝、突然僕のスマホに届いた。送り主の名前はない。ただシンプルなメッセージが表示されているだけだった。『この手紙を7人に送らないと、あなたに小さな不幸が訪れます』僕は鼻で笑った。こんな時代に不幸の手紙なんて、古...
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#346 扉の向こう側

その扉は、昨日までは確かにそこにあった。学校帰りの路地裏、雑居ビルの影に隠れるようにして、古ぼけたレンガの壁面に場違いなほど鮮やかな緑色の扉が存在していたのだ。「あれ、こんなのあったっけ?」最初にその扉に気づいたのは夏樹だった。夏樹は好奇心...
SF

#345 最後のジョーク

その日、朝から奇妙なニュースが流れていた。科学者たちが巨大な隕石が地球に衝突すると断言したのだ。どのテレビ局も『残り24時間』というタイマーを画面の端に表示し、街は緊張に包まれる――はずだった。しかし、実際には奇妙なことが起きていた。街頭に...
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#342 花びらに溶けた記憶

「ごめんなさい。あなたのことを覚えていないんです」その一言が、陽介の胸に深い穴を開けた。彼女――芽衣は静かな病室のベッドの上で、陽介に微笑みを向けた。窓の外では春の風が桜の花びらを運び、まるで雪のように降り積もっている。芽衣は一週間前に交通...
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#340 正しい歴史

「じゃあ、このページを開いて。今日は江戸時代の終わりから明治時代の始まりについて勉強するぞ」歴史の授業。いつもと変わらぬ風景のはずだった。俺は教科書を開き、指定されたページを見た。——そこで、目が止まった。『江戸幕府は宇宙進出を試みたが、技...