じんとくる

ちいさな物語

#170 地下三階

放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる...
ちいさな物語

#167 世界中でただ一人

目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて...
ちいさな物語

#165 老婆の井戸と願いごと

「願いを叶えてやろう。大切な何かと引きかえに」——井戸のそばの老婆が差し出す取引の、ほんとうの意味とは。
ちいさな物語

#158 空色の続き

「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める...
ちいさな物語

#152 消えた親友

それは雨の日曜日だった。大学に合格し、春から一人暮らしをすることになった。そのための部屋の片付けをしていた僕は、ふと昔のアルバムを手にする。写真の中には、小学生の頃の僕が満面の笑みを浮かべている。写真の中で僕は知らない少年と楽しげに肩を組ん...
ちいさな物語

#142 ぶさいく犬の幸福論

あの日、ペットショップの片隅で一匹の犬と目が合った。いや、目が合ったというより、あまりにも気になって目が離せなかった。なにせその犬はとびきりブサイクだったのだ。鼻は潰れたように低く、目は変に離れている。耳も両方が変な方向に折れていて、足の長...
SF

#141 ホーム

◆第8期惑星歴215年・第3恒星航路41日目今日、私は地球に降り立った。この任務に志願したとき、同僚たちは皆、奇異な目で私を見た。「なぜ、あんな無人の星へ?」その理由は私にもよくわからない。ただ、“地球”という響きに、抗えない引力のようなも...
ちいさな物語

#140 涙を拾う赤鬼の話

これはな、わしの村に昔から伝わっとる不思議なお話じゃ。その村のはずれにある山には、一匹の赤鬼が住んどった。
鬼と聞けば怖いかもしれんが、この赤鬼は心の優しい、ちいと変わった鬼じゃった。村で誰かが悲しくて涙を流しとると、赤鬼はどこからともなく...
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#135 山の神様とおむすび畑

干ばつの村。腹を空かせて山をさまよう太助がたどり着いたのは、おむすびがぽこぽこ実る、不思議な畑だった。
ちいさな物語

#131 祠の管理人

どうしてこうなったのかは分からないが、僕は気が付けば、小さな祠の管理人になっていた。転生した先が伝説の勇者でもなく、かといって魔王でもなく、さして重要ではない祠の管理人だなんて、誰が想像できただろうか。もちろんチートも何もない。初めて目を覚...