じんとくる

ちいさな物語

#197 逆さまの雪

その町では、雪は降るのではなく、地面から空へ昇っていく。一片ごとに、誰かの願いを抱いて——。
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#194 片付かない部屋

「本当に、ごめんね。たぶん、ひとりじゃ無理だと思って」そう言って僕を呼んだのは、中学時代からの同級生・美沙だった。学生時代から散らかし魔だった彼女の部屋が、どうしようもなく荒れてきたという。興味本位で訪ねたワンルームは、予想以上の惨状だった...
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#184 あの人の話

「なあ、覚えてるか? ほら、あの人。あの喫茶店にいた、なんてことないけど、不思議と気になる感じの人」そう言うと、この町の年の近いやつは、大抵みんな、少し笑ってうなずく。名前を出さなくても通じるんだ。あの人は、そういう人だった。初めて会ったの...
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#182 千年の庭

この国では、生まれた家の庭にどんな木が生えているかで、人の力が決まる。紅葉の家系は火を扱い、柊の家系は霊を祓う。だがその力は、木の状態によって左右されるため、庭木の世話は代々の重要な務めだった。ユウトの家の庭には、樹齢千年を超えるかしの巨木...
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#178 君を観測するまで、君は存在しなかった

ぼくは、毎朝同じ夢を見る。灰色の霧が立ちこめる部屋。窓の外にはなにもない。ただ、光のようなものが、ぼんやりとそこにあるだけ。その部屋の中央に、彼女は座っている。黒髪の、透き通るような肌の、憂いを含んだ目をした少女。名前も、年齢も、なにもわか...
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#171 空き缶の恩返し

その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く...
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#170 地下三階

放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる...
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#167 世界中でただ一人

目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて...
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#165 老婆の井戸と願いごと

「願いを叶えてやろう。大切な何かと引きかえに」——井戸のそばの老婆が差し出す取引の、ほんとうの意味とは。
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#158 空色の続き

「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める...