じんとくる

ちいさな物語

#039 選ばなかった道の先に

俺には、「もしも」が見える。たとえば、目の前に二つの選択肢があったとする。右へ行くか、左へ行くか。その瞬間、脳裏にぼんやりとした映像が浮かび上がる。右を選べば雨に降られ、左を選べば財布を落とす。どちらがマシかを考え、俺は最善の道を選ぶことが...
SF

#036 終末のハイウェイ

気がついたら、世界は終わっていた。地震があったのか、噴火があったのか、核爆弾でも飛来したのか、一瞬にして疫病が流行ったのか、それらが同時多発的に起こったのか、報道機関も壊滅してしまったので厳密な原因は分からない。ただ、都市は瓦礫と化し、人影...
ちいさな物語

#030 知らない子

いやさ、俺も驚いたんだよ。その夜、残業でくたくたになっていた俺はスマホに留守電が入っているのに気づいた。親から着信が入っていて「今度、お前のところに田舎の親戚の子が行くから、しばらく面倒見てやってくれ」って。いや、俺、仕事忙しいし、何でそん...
ちいさな物語

#027 魔法道具屋の厄介な仕事

ガタが来ている店の扉がきしみ、ドアベルが鳴った。入ってきたのは、背の高い男だ。外套のフードを目深に被り、顔はほとんど見えない。でも、感じるんだよ、ただの人間じゃないってことを。「ここは、魔法道具をなんでも直せる店だと聞いた」低い声でそう言わ...
ちいさな物語

#025 地下迷宮の囁き

あの日、雨が降っていたんです。急に降ってきたんで、あわてて入った駅の地下街に入ったんですよ。普通に雑貨屋とか服屋やカフェが並んでいる本当にごく普通の地下街だったんです。雨がやむまでちょっとゆっくりしちゃおうかなって思って、あまり土地勘はなか...
ちいさな物語

#024 見知らぬ守護霊

最初に違和感に気づいたのは朝顔を洗っていたときだった。鏡の中の自分の肩の辺りの空間が薄ぼんやりとにじんでいる。鏡が汚れているのかと思ったが、そのにじみは自分の動きにぴったりとついてくる。よくわからなかったが、たいしたことでもないので気にしな...
ちいさな物語

#020 終わらない一日

この繰り返しが始まったのはいつからだろう。私はもう何度も、同じ一日を体験している。この日は私にとって人生最悪の日だ。大切な人を失うという、耐え難い悲劇の日。その朝、彼女と最後の口論をしたのを覚えている。くだらないことで言い争いになり、彼女は...
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#018 手のひらの宇宙

一人暮らしが味気なくて、何となくペットショップに立ち寄った。動物を飼うつもりはなかったが、動物と暮らす自分を想像をしてみてもいいかもしれないとふと思ったのだ。そこで出会ったのは、少し変わった模様のハムスターだった。背中に広がる斑点は、まるで...
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#015  真夜中のキッチンカー

深夜、静まり返った商店街の一角に、いつの間にか現れた古びたキッチンカー。白いペンキが剥げ落ち、看板には「Midnight Meals」とだけ書かれている。客など誰一人いないはずの時間に、車内のランプだけがぼんやりと灯り、窓口には髪の長い往年...
ちいさな物語

#008 無限こたつ

家族四人で囲むこたつ。テーブルの上には湯気の立つ土鍋と、ごく普通だけど魅力的な具材が並んでいる。僕はデザートにと出してきたみかんを片手に、鍋が煮えるのを待っていた。「このこたつ、居心地いいよね」と妹もみかんをもてあぞびながら言った。僕も同意...