くすっと笑える

ちいさな物語

#177 納豆の糸

納豆が好きだ。昔から毎朝、白いご飯にかけて食べるのが習慣だ。混ぜる回数はきっちり三十回と決めていて、醤油は少なめ、ネギはたっぷり。今日も同じように朝食を楽しむはずだった。その日、納豆の糸が妙に丈夫だった。器から口へ運ぶ途中で切れることなく、...
ちいさな物語

#174 世界一わかりやすい靴下のはき方

「おぬし、靴下の正しいはき方を知っておるか?」町の片隅にある古びた喫茶店。コーヒーをすする私に、向かいの席の老人がそう問いかけた。「え? 靴下のはき方ですか?」「そうじゃ。ただ足を突っ込めばいいと思うておるじゃろう?」当たり前じゃないか。靴...
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#169 世界がゲームになった日

いつも通りの朝だったはずだ。けれど窓を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。通勤中のサラリーマン二人が突如、道端で格闘ゲームのキャラクターのように激しく殴り合い始めたのだ。「光弾拳!」ネクタイを締めた男性が叫ぶと、実際に手から光るエネ...
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#164 終わらないエスカレーター

その日も私はいつものように駅へ向かった。改札を通り、乗り慣れたエスカレーターに足をかける。足元には、「お気をつけてご利用ください」というありふれた注意書きがある。無意識のうちに視線を下げ、ぼんやりとその文字を眺めていた。ふと、妙に長い時間エ...
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#162 名探偵コーディネーター

世間には数多くの名探偵がいるが、彼らが活躍できるのは偶然ではない。実は私のような、探偵が活躍できるよう事件を演出する裏方「事件コーディネーター」が活躍しているからなのだ。探偵にも色々なタイプがいる。心理戦が得意な者、緻密な科学的捜査を好む者...
ちいさな物語

#159 友達の前世

「俺、前世の記憶があるんだ」そう言ったのは、俺の親友、大輝だった。「また適当なこと言ってんな」俺は笑いながら返したが、大輝は真顔だった。こいつはいつもふざけてばかりなのに、そのときの表情は妙に冷静で、冗談とは思えなかった。「本当だって。……...
イヤな話

#147 近すぎる叔母

「昨日、デート楽しかったんでしょ? あの人、いい感じ?」近所に住む叔母が不意に私に聞いてきた。驚きで喉が詰まった。確かに昨日、初めてのデートだったが、誰にも話していない。「どうしてそれを?」叔母はいたずらっぽく笑っている。「そんなのすぐわか...
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#139 我らNPC、ニセ勇者御一行様

「我々って、もしかして脇役ですか?」そんな疑惑が冒険の最中に浮上したのは、仲間たちが焚き火を囲んだある夜のことだった。一応、魔王討伐を掲げてはいるものの、勇者でも賢者でもない、戦士でもない。はたまた謎めいた美しき姫君でもなければ、魔王討伐を...
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#138 芽吹く荷物

その荷物が届いたのは、雨の降る夕方だった。玄関の前に置かれた段ボール箱。宛名には僕の名前と住所が書かれていたが、差出人の欄はかすれて読めない。通販を頼んだ覚えはないが、もしかしたら家族の誰かが注文したものを仕送りとしてそのまま転送した、とか...
ちいさな物語

#134 失敗したテレポート

休日の朝、シャワーを浴びようと浴室の扉を開けると、浴槽の中に見知らぬ男の上半身があった。「すみません、失敗しちゃいまして」男は申し訳なさそうに笑い、軽く頭を下げた。「え、えっ? 誰ですか!?」私は驚いて後ずさったが、男は穏やかな声で続けた。...