くすっと笑える

ちいさな物語

#578 大「代行」時代

いやもう、マジで現代社会の効率化ってのはどこまで行っちゃうんですかね?皆さんもご存知でしょう、数年前に流行った退職代行。そのとき僕はまだ笑っていました。いやまあ、気まずいもんな、とは思ったわけです。上司に「辞めます」と言うの、胃がきゅっとし...
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#574 釣れるもの

買い物の帰りに、私は町はずれのため池でしゃがみこんでいる子供たちを見つけた。細い竹の枝に糸を結び、先にはおそらくスルメでもつけているのだろう。懐かしい。ザリガニ釣りに違いない。けれど、いちばん端の男の子が引き上げたものを見て、私は足を止めた...
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#571 榊原さんへの伝言

その日のオフィスは、まるで戦場だった。鳴り止まない電話、飛び交う怒号、そしてなぜか誰かが持ち込んだであろう「たこ焼き」のソースの香りが充満し、脳が正常な判断を放棄し始めていた。私、佐藤は、締め切り直前の資料作成に追われながら、営業部のエース...
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#570 落日の後悔

その町を訪れた友人の佐藤は、商店街の不自然なほどの「静寂」に違和感を覚えたようだった。「なぁ、何食べたい? 実は料理得意だからな」私は肉屋で豚こま肉を包んでもらいながら声をかけた。時刻は午後四時五十九分。商店街の店主たちはすでにシャッターを...
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#569 エキストラ・ブルーの街角

大学卒業を控え、入社式までの空白期間は、恐ろしいほどに平坦だった。友人たちは卒業旅行だ、最後の合コンだと騒いでいたが、俺の手元には使い道のない時間だけが、澱(おり)のように溜まっていた。あまりの暇さに耐えかねて、地元の友人である佐藤に連絡を...
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#566 叶えるお守り

駅から坂を十分ほど上ると、杉木立に囲まれた小さな神社が現れた。鳥居の横の掲示板には、地元の祭りの案内と「清らかな心」という墨書が貼られている。いかにも地域に密着した小さな神社という感じだ。僕の聞いた噂は本当なのだろうか。鳥居をくぐって進むと...
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#565 名探偵アリスの微笑み

霧が深く立ち込める古い洋館の広間で、一人の少女が優雅にティーカップを傾けていた。彼女の名は結城アリス。この界隈では「歩く芸術品」とまで称される美少女探偵だ。ウェーブがかった長い黒髪に、陶器のような白い肌。そして、すべてを見透かすような深い瑠...
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#563 夢の途中で

最初に気づいたのは、たぶん2月の終わり頃だったと思う。その日の夢はやけに鮮明だった。それ自体はたまにあることなんだけど、このときはもっとおかしな夢だった。「遅刻だ!」って大慌てで駅の階段を駆け上がっていく。でも改札前で定期が見つからない。泣...
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#560 夢の税務署からの呼び出し

最初の呼び出しは、寝落ちしたソファの上だった。目を閉じたはずなのに、俺は蛍光灯の白い光の下に立っている。床は灰色のタイルで、空気は書類と鉛筆の匂いがしていた。正面の看板に、でかでかと「夢税務署」とある。「え?」と声が漏れた。受付の窓口には、...
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#558 チョークの決闘線

仕事帰り、人だかりを見つけて足をとめた。チョークで書かれた円の周りに、同じく仕事帰りみたいな大人が十人ほど、距離を取って立っていた。不思議と張り詰めた空気が漂っている。「ここ、何やってるんですか」と隣の男に聞くと、男は小声で「バトル」と答え...