考えさせられる

ちいさな物語

#481 霜柱の神さま

冬の朝ってさ、空気が張り詰めてるだろ。息をするだけで、胸の奥まで冷えるようなあの感じ。俺は昔から冬の朝が好きだった。特に、霜柱を踏む音。しゃり、しゃりって音がたまらない。子どものころからそうだった。学校へ行く道すがら、道端の霜を見つけては、...
SF

#471 宇宙海賊の長い一日

楽して稼ぐのが信条の宇宙海賊。無人の貨物船のはずが、おしゃべりAI相棒と、とんだ厄日に巻き込まれていく。
ちいさな物語

#435 おじさんの中のおじさんたち

あれは本当に妙な夜だったんです。駅前のベンチに腰かけていると、不意に隣におじさんが座ったんですよ。よれよれのスーツ、手に持った紙袋からはパンの匂い。まあ普通のおじさんだと思いました。ところが次の瞬間、そのおじさんの胸元がパカッと開いて、中か...
SF

#432 みらいさま

むかしむかし、ある山あいの村に奇妙なものが落ちてきたそうな。夜の空が昼のように明るくなり、どーんと火の玉がすっと降りてきて、畑の真ん中に黒い箱を残したのじゃ。村人たちは驚いて集まり、その箱を囲んだ。「これはなんじゃ」「火薬か、それとも鬼の道...
SF

#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
ちいさな物語

#420 自販機に選ばれし者

その自販機は、商店街の外れにひっそりと置かれていた。パッと見は普通のドリンク自販機だ。ラインナップもコーラ、緑茶、スポーツドリンク、缶コーヒーと一見なんの変哲もない。しかし、その自販機には奇妙な噂があった。「客を選ぶ」らしいのだ。どういうこ...
SF

#419 昨日まで住んでいた星

目を覚ましたとき、空の色が違っていた。昨日まで住んでいた星の空は、柔らかな青だったはずだ。けれど今日見上げる空は、薄紫に揺らめき、星々が昼間から淡く瞬いていた。喉が乾き、空気を吸い込む。微かに甘い匂いがした。「……ここはどこだ」周囲を見渡す...
ちいさな物語

#418 黒い水面

最初に異変が起こったのは、静かな朝だった。「なあ、あれ……何だ?」公園の池を覗き込んでいた男が、呆然と呟いた。普段は穏やかに波打つ水面が、何かに侵食されるように黒くうごめいていた。虫だった。小さな甲虫のような形状だが、明らかに普通の昆虫とは...
SF

#415 孤独なるプロメテウス

私は惑星探査機、正式名称は「プロメテウス-XIII」。私の使命は広い宇宙を探索し、生命の痕跡を探してデータを地球へと送り返すこと。そう、冷たい金属の塊である私に心などあるはずがなかった。だが何千年も孤独な星間の旅を続けるうちに、私は自分が考...
ちいさな物語

#413 無限教室

とある大学。文学部、日本文学科、口承文芸ゼミ准教授、相良は研究室のゼミ学生数名を連れて、ある廃校に足を踏み入れた。コンクリートの壁は黒ずみ、窓は割れ、風が吹き込むたびにカーテンの残骸がばさばさと揺れる。入口の看板には「○○市立第三中学校」と...