寝る前に

ちいさな物語

#326 最後のプレイヤー

「世界を賭けたカードゲームだよ」気がついたとき、僕は見知らぬ部屋にいた。薄暗い天井からぶら下がる裸電球が、テーブルの上に鈍い光を落としている。向かいには三人の男が座っていた。テーブルには古びたカードが並び、そのどれもが長い年月そのもののよう...
ちいさな物語

#325 森の宴

森の奥で迷ったとき、遠くから楽しげな音楽が聞こえてきました。導かれるように進むと、そこには奇妙な光景が広がっていました。私はその日、特に目的もなく森を訪れただけでした。あえて言うなら、ただ日常から逃げたかったのです。しかしどこかで道を間違え...
ちいさな物語

#324 幽霊の相手をするおじさんの話

「あの古びた商店街で見かけるおじさん、なんか普通じゃない気がしてさ。聞いてみたら、幽霊の相手が仕事だって言うんだよ」俺が大学生だった頃、地元に帰るたびに通る商店街があったんだ。昼間でも人通りが少なくて、どこか寂れた感じの場所だった。そこの片...
ちいさな物語

#322 終わらない物語

夜が更けるほどに、私は本の世界に没頭していた。読み進めても読み進めても、物語は終わらない。奇妙な予感が胸をよぎる。古書店で偶然見つけたその本は、表紙に「物語は繰り返される」とだけ書かれていた。著者名も出版社も記されていない、不気味なほど無機...
ちいさな物語

#320 天使がうちに降りてきた

雲間から一筋の光が降りてきたとき、なんとなく予感があったんだ。「何かが始まるな」ってね。それは、いつもの昼下がりだった。空が急に暗くなったかと思ったら、雲の隙間からまばゆい光が差し込んできた。その光の中に、何かがいた。いや、誰かと言うべきか...
ちいさな物語

#315 魔法の使えない魔道士と飛べないドラゴン

シルグは、村一番の役立たずの魔道士だった。幼い頃から魔力の才能に乏しく、いつも魔法を失敗しては笑われ、誰からも馬鹿にされた。村の者たちは呆れて言ったものだ。「お前の魔法なんて、風に揺れる葉っぱほどの役にも立たないな」だから彼が村を飛び出し旅...
ちいさな物語

#313 扉の向こう、夕陽の果て

残業につぐ残業。しかし労働環境がブラックといわれると、そこがすごく曖昧だ。有給は頑張ればなんとか取れる。上司は厳しいが、ぎりぎり常識の範囲内。ただ、人手不足なのか、残った人員への仕事は日に日に増えていく。いっそ笑えるくらいのブラックな環境で...
ちいさな物語

#312 空のリモコン

その朝、窓の外には青空が広がっていた。夜の間に雨が降っていたはずだが、地面は乾ききっていて、木々の葉もさらさらと風に鳴っている。広瀬尚人は、いつもより軽い足取りで階段を降り、テレビのリモコンを手に取った――が、実はそれはテレビのリモコンでは...
SF

#311 彗星が落ちたあとの話

彗星が落ちたという丘に足を踏み入れたのは、夏の終わりだった。丘には不自然なくぼみがあり、その底で一人の少女が空を見上げている。その光景はかなり奇妙だったが、なぜか僕は怖くなかった。「君、大丈夫?」声をかけると少女はゆっくりと振り返った。月の...
ちいさな物語

#309 鐘のない鐘楼

昔々、とある小さな村に、一つの大きな時計塔があった。村のどこからでも見えるその塔は、長い年月を刻み続け、村人たちの生活を支えていた。だが、この時計塔には奇妙な噂があった。「どれだけ階段を登っても、鐘楼にはたどり着けない」村人たちは子供の頃か...