寝る前に

ちいさな物語

#181 モンスター退治の経費計算

それは、黄金月の12日だったかのう。王都を騒がせていた大空の火竜・バルバルガを、ついに倒したってニュースが広まったんじゃ。倒したのは、五人組の冒険者パーティ「煌滅旅団ルミネグラ」——
剣士に魔法使い、僧侶に盗賊、あと何を間違ったのか、会計士...
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#179 生贄募集、時給1500円〜(交通費支給)

「生贄バイト、急募。時給1500円〜。未経験歓迎」そんな求人広告を見たタケル(28・フリーター)は思った。「なんか宗教系っぽいけど、時給いいし、とりあえず応募しとくか」面接会場は宗教法人なんたらと書かれた怪しげな事務所。面接官は無言で壺を磨...
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#178 君を観測するまで、君は存在しなかった

ぼくは、毎朝同じ夢を見る。灰色の霧が立ちこめる部屋。窓の外にはなにもない。ただ、光のようなものが、ぼんやりとそこにあるだけ。その部屋の中央に、彼女は座っている。黒髪の、透き通るような肌の、憂いを含んだ目をした少女。名前も、年齢も、なにもわか...
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#176 竜宮城の王子様

ねえ、信じてくれる?水族館で家族とはぐれて迷子になっただけなのに、わたし、竜宮城に行ったんだよ。うまく説明できるかわからないけど、あの日のこと、話してみるね。それは、家族で出かけた大きな水族館でのことだった。夏休みの中頃、すごく蒸し暑い日で...
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#175 わかりやすいご利益のある神社

ご利益が“メニュー表”で示された神社。10円から願いが買える、やたら話の通じる神様を訪ねてみると——。
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#174 世界一わかりやすい靴下のはき方

「おぬし、靴下の正しいはき方を知っておるか?」町の片隅にある古びた喫茶店。コーヒーをすする私に、向かいの席の老人がそう問いかけた。「え? 靴下のはき方ですか?」「そうじゃ。ただ足を突っ込めばいいと思うておるじゃろう?」当たり前じゃないか。靴...
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#171 空き缶の恩返し

その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く...
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#170 地下三階

放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる...
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#168 勇魚の骨と海神の約束

むかしむかし、海辺の村にね、五助という漁師がいたんだと。五助は毎日、小舟に乗って漁をして暮らしておった。ある日、大きな嵐の翌朝に浜辺を歩いていると、見たこともないような大きな骨が砂浜に打ち上げられていたんだそうな。「これは何の骨じゃろう?」...
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#167 世界中でただ一人

目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて...