寝る前に

ちいさな物語

#423 五つの宝と姉弟の旅

今でもあの旅を思い出すと、胸が熱くなるんです。まだ僕と姉が若かった頃の話です。「世界に散らばる五つの宝を集めれば、どんな願いも叶う」――そんな古い伝承を聞いたことがあるでしょう?僕らは、その宝を探す旅に出たんです。理由は単純でした。姉は幼い...
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#410 ファンタジー世界の名探偵

俺の職業は「名探偵」だ。ファンタジー世界では、普通は戦士とか魔法使いとか僧侶とか、そういう職業を名乗る。ところが俺の場合、なぜか職業欄に「名探偵」と書かれていた。最初は笑い者だったよ。「なんだよそれ、ただの冷やかしじゃないか」「モンスター相...
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#401 秘密戦隊父と母

押入れの掃除なんて、正直気が進まなかった。古い布団やら黄ばんだ雑誌やら、どうせガラクタばかりで大変なのは目に見えていた。ただ、捨てられない大量のマンガ本をしまう場所がほしいと言ったら、押入れを片付けたら、空いたスペースを使っていいと言われた...
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#396 あのとき出会った子供

あれはもう何年も前の話になるな。俺がまだ駆け出しの冒険者だった頃、仲間と共に異世界の荒野を旅していたときのことだ。ある街道沿いの村に立ち寄ったとき、ひょっこり顔を出した子供がいた。
年の頃は十歳くらいだろうか。痩せぎすで、けれど目が妙に澄ん...
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#395 とある記者の取材記録

俺は記者だ。剣士でも魔術師でもなく、ただペンを取り文章を書くことを生業にしている。要するに「事実を取材し、人々に伝える」のが仕事だ。勇者のように剣を振るう気もなければ、王に仕える気もない。俺が欲しいのは、ただ「よい記事のネタ」だけだ。今回の...
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#394 月影の庵

山には不思議な話がつきものでございます。中でも「月影の庵」の噂は、古くから村人たちの口の端に上り、子や孫へと語り継がれてまいりました。ある夜のこと。若い猟師の庄五郎が山で道に迷ったそうです。谷を越え、崖をよじ登るうちに日はすっかり落ち、辺り...
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#388 最後の盆踊りの夜に

これから話すのは、ほんの少し昔、僕が小学五年生だった夏休みの最後の夜の出来事なんだ。田舎の小さな村だから、毎年盆踊り大会が開かれるんだけど、今年もその日がやってきた。夏休みの終わりに合わせて行われるから、僕ら子供にとっては夏のフィナーレだ。...
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#380 あざらしからの残暑見舞い

今年の夏はやけに暑かった。八月の終わりになっても、蝉の声は止まず、夜になってもまとわりつくような湿気が抜けない。僕の住むアパートの郵便受けには、町内会の回覧板や広告しか入らないのが普通だ。だけど、あの日は違った。ポストを開けると、見慣れない...
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#379 虚無ガチ勢の夏

「ガチ勢」って言葉、最近よく聞くだろう?どんな趣味でも、必ずガチな人がいる。釣りガチ勢、アイドル追っかけガチ勢、猫吸いガチ勢、断捨離ガチ勢。だが、僕の隣に住んでいたあの人は一味違った。「俺は虚無ガチ勢だ」と堂々と名乗るその男、村瀬さん。最初...
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#378 走馬灯の編集はじめました

正直に言うと、自分が死ぬのがあんなにあっけないとは思わなかった。朝、餅を食べながらスマホで面白動画を見ていて、思いっきり笑った瞬間、餅が喉に詰まってそのまま──という間抜けな最期だった。さすが日本で最も人を殺している食べ物だ。まだそこそこ若...