すきま時間に

ちいさな物語

#020 終わらない一日

この繰り返しが始まったのはいつからだろう。私はもう何度も、同じ一日を体験している。この日は私にとって人生最悪の日だ。大切な人を失うという、耐え難い悲劇の日。その朝、彼女と最後の口論をしたのを覚えている。くだらないことで言い争いになり、彼女は...
ちいさな物語

#019 薔薇色の嘘

片田舎に佇む古びた屋敷に住むお嬢様、クラリッサは、目が見えない。彼女の目は開いているが、光も色も感じることができない。それでも、彼女の世界は鮮やかだった。執事のアルフレッドが、彼女に毎日「景色」を語ってくれるからだ。「今日は曇り空です。灰色...
ちいさな物語

#018 手のひらの宇宙

一人暮らしが味気なくて、何となくペットショップに立ち寄った。動物を飼うつもりはなかったが、動物と暮らす自分を想像をしてみてもいいかもしれないとふと思ったのだ。そこで出会ったのは、少し変わった模様のハムスターだった。背中に広がる斑点は、まるで...
ちいさな物語

#017 侍がいる

あれは3年前の秋の夜だった。残業帰りの深夜、駅前の自販機でコーヒーを買ってたんだ。ふと振り返ると、そこにいたのが、着流し姿の男だった。いや、普通の着流しじゃない。腰に刀を差して、髷を結った、まさに時代劇から飛び出してきたみたいな侍だ。俺は一...
SF

#016 新米時空警察の大失敗

一人で留守番中の新米時空警察。手を出すなと言われたのに動いてしまい、哲学の歴史をまるごと巻き込む大失敗を——。
ちいさな物語

#015  真夜中のキッチンカー

深夜、静まり返った商店街の一角に、いつの間にか現れた古びたキッチンカー。白いペンキが剥げ落ち、看板には「Midnight Meals」とだけ書かれている。客など誰一人いないはずの時間に、車内のランプだけがぼんやりと灯り、窓口には髪の長い往年...
SF

#014 君への遺書に

目を覚ました時、僕の体はほとんど動かなかった。部屋の中は静まり返り、唯一の音は、いつくもの管につながれた君が隣でデータを処理する機械音だけだった。僕の希望が聞き入れられているのであれば、世界のありとあらゆるデータが今君に注がれている。「プロ...
ちいさな物語

#013 心霊スポットでの心得

高校の頃、不良仲間と「やばい場所」を巡るのが流行ってたんだ。俺たちは度胸試しがてら、地元で有名な廃病院に行くことにした。夜中の2時、懐中電灯を片手に病院の門をよじ登って侵入した。中はカビ臭くて、壁には落書きだらけだった。どの落書きもよくある...
ちいさな物語

#012 パワハラ課長とカブトムシ

ある朝、パワハラ課長がカブトムシを頭に乗せて出社してきた。「これからは虫の王者とともに課を治める」——。
ちいさな物語

#011 三時間だけの同窓会

ふらりと立ち寄った酒場で、見知らぬ男たちが親しげに手招きする。会ったことなどないはずなのに、胸の奥がざわついて——。