なあ、お前、あの山がどうして呪いの山になったのか知っているかい?
今はただの荒れ果てた山だが、昔はあそこに見事な黄金の鱗を持つ竜が住んでいたんだよ。山もとても豊かでね。
その頃はこの村もとても豊かな村だった。秋はたくさんの実りがあり、井戸の水もずっときれいで潤沢にあった。
けれど、村の人たちはその豊かさを、自分たちの努力のおかげだと思い込んでしまったんだね。
山の頂きに住む竜を恐ろしい怪物だと言いふらす者が現れたんだ。
「あの竜さえいなければ、もっと自由に山へ入れるのに」と、欲深い連中がささやき始めた。
そこへ、王都からきらびやかな鎧をまとった一人の騎士がやってきたのさ。
村人たちが事情を話すと、彼は立派な剣を振りかざし、山へと登っていった。
三日三晩、山からは雷のような轟音が響き渡り、四日目の朝に静寂が訪れた。
騎士は竜の巨大な首を引きずって村に降りてきたんだよ。
村人たちは大喜びして、騎士を英雄として迎え、何日も酒盛りを続けたんだ。
けれど、その祭りの最中から、おかしなことが起こり始めたのさ。
まず、村の誇りだった大井戸の水が、真っ黒に濁ってしまった。
一口飲んだ者は、激しい腹痛に襲われて倒れてしまったんだよ。
次に、黄金色に輝いていた稲穂が、一晩のうちに真っ黒に腐り果てた。
山から吹き下ろす風に乗ってやってくるのは、鼻を突くような悪臭だった。
騎士は「倒された竜の最後の呪いだ。すぐに収まる」と言ったけれど、事態は悪くなる一方だったよ。
村人たちの肌には赤い斑点が現れ、幼い子供たちから順に熱を出して寝込んでしまった。
困り果てた村の長老たちは、山の麓に住む目の見えない老婆のもとへ相談に行ったんだ。
老婆は村人たちの話を聞くと、大きな叫び声をあげた。
「お前さんたちは、何てことをしてくれたんだ。あの竜は、怪物なんかじゃない」
老婆の話によると、あの山には太古の昔から、大地を腐らせる強烈な毒が眠っていたんだそうだ。
竜はその毒を自分の体の中に吸い込み、浄化して山に返していたんだ。竜にとっては、それはただ生きる営みだったのだろう。お前が息を吸って、吐いているのと同じさ。だから村人たちの生活に関わっているとは思わなかっただろうね。
黄金に輝く鱗は、毒を浄化する際に発せられる光だったんだ。
竜が邪悪に見えていたのは、抑えきれない毒がわずかばかり竜の周囲から漏れていて、それがひどく山を荒らしているように見えたからさ。
騎士が竜を殺したその瞬間、行き場を失った毒が山中に流れ出し、村にまで到達したんだ。
村人たちは血の気が引くのを感じたけれど、もう後の祭りだったんだよ。
英雄と呼ばれた騎士は、真っ先に王都へ逃げ帰ってしまった。
残されたのは、毒に侵された大地と、後悔に震える村人たちだけだったんだ。
それからというもの、この村でまともな作物が育つことは二度となかった。
お前も、一度見ただけの状況や、人の噂だけで物事を判断してはいけないよ。何事にも慎重になるべきなんだ。
本当に大切なものは、一番恐ろしく見えるものの陰に隠れていることもあるんだから。
さあ、もう寝なさい。夜風にあたると、あの山の毒が喉を焼くからね。


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