じんとくる

SF

#345 最後のジョーク

その日、朝から奇妙なニュースが流れていた。科学者たちが巨大な隕石が地球に衝突すると断言したのだ。どのテレビ局も『残り24時間』というタイマーを画面の端に表示し、街は緊張に包まれる――はずだった。しかし、実際には奇妙なことが起きていた。街頭に...
ちいさな物語

#342 花びらに溶けた記憶

「ごめんなさい。あなたのことを覚えていないんです」その一言が、陽介の胸に深い穴を開けた。彼女――芽衣は静かな病室のベッドの上で、陽介に微笑みを向けた。窓の外では春の風が桜の花びらを運び、まるで雪のように降り積もっている。芽衣は一週間前に交通...
ちいさな物語

#337 カウンターの男

「信じてもらえないかもしれないけど、このバーに幽霊がいるって知ってるか?」隣の席の男が唐突に話しかけてきた。その夜、僕はいつものように馴染みのバーで一人、静かな時間を楽しんでいた。彼の声は静かな店内にしっくりと馴染み、不思議な雰囲気を作り出...
ちいさな物語

#328 怪談の食卓

その街の路地裏には、看板のない小さな食堂があるという。この食堂の主人は、『怪談ハンター』と呼ばれる奇妙な男だ。「お客さん、怖い話はお好きですか?」店主は、訪れた客にいつもそんなふうに問いかけるらしい。――ある蒸し暑い夏の日、私は偶然その食堂...
ちいさな物語

#324 幽霊の相手をするおじさんの話

「あの古びた商店街で見かけるおじさん、なんか普通じゃない気がしてさ。聞いてみたら、幽霊の相手が仕事だって言うんだよ」俺が大学生だった頃、地元に帰るたびに通る商店街があったんだ。昼間でも人通りが少なくて、どこか寂れた感じの場所だった。そこの片...
ちいさな物語

#322 終わらない物語

夜が更けるほどに、私は本の世界に没頭していた。読み進めても読み進めても、物語は終わらない。奇妙な予感が胸をよぎる。古書店で偶然見つけたその本は、表紙に「物語は繰り返される」とだけ書かれていた。著者名も出版社も記されていない、不気味なほど無機...
ちいさな物語

#315 魔法の使えない魔道士と飛べないドラゴン

シルグは、村一番の役立たずの魔道士だった。幼い頃から魔力の才能に乏しく、いつも魔法を失敗しては笑われ、誰からも馬鹿にされた。村の者たちは呆れて言ったものだ。「お前の魔法なんて、風に揺れる葉っぱほどの役にも立たないな」だから彼が村を飛び出し旅...
ちいさな物語

#312 空のリモコン

その朝、窓の外には青空が広がっていた。夜の間に雨が降っていたはずだが、地面は乾ききっていて、木々の葉もさらさらと風に鳴っている。広瀬尚人は、いつもより軽い足取りで階段を降り、テレビのリモコンを手に取った――が、実はそれはテレビのリモコンでは...
ちいさな物語

#309 鐘のない鐘楼

昔々、とある小さな村に、一つの大きな時計塔があった。村のどこからでも見えるその塔は、長い年月を刻み続け、村人たちの生活を支えていた。だが、この時計塔には奇妙な噂があった。「どれだけ階段を登っても、鐘楼にはたどり着けない」村人たちは子供の頃か...
ちいさな物語

#305 視えぬ男

霊能者・桐山一郎はその名を全国に轟かせていた。迷える人々に救いの言葉を与え、霊を視る能力を持つと言われていた。予約は数年先までいっぱいになり、それでも相談したいという者が後を絶たなかった。「あなたの背後に憑いている女性の霊ですね。彼女は寂し...