ぞわっとする

ちいさな物語

#426 笑いの迷宮

あれは、ほんの出来心だったんです。仕事帰りに見かけた細い路地にふと足を踏み入れました。その路地は他の道とは全然雰囲気が違ったんです。看板もなく、行き止まりのはずなのに、奥に暗いアーチのような入口が口を開けていたんです。まるで「入ってみろ」と...
ちいさな物語

#425 盤上に消える

古びた喫茶店の片隅に置かれた知らないボードゲーム。遊んだ仲間の一人が、次のターンが来る前に姿を消した。ゲームは続き、盤上の駒は消えた友人の席を指し示す。恐怖と好奇心の板挟みのまま、残された者たちはダイスを振る手を止められなかった。(文字数:...
ちいさな物語

#424 立会人

立会人という人を、あなたは聞いたことがあるだろうか。それは奇妙な仕事をする人だ。特別何かをするわけではない。ただ立ち会う。受験の合格発表を見に行くとき、初めて入る店の敷居をまたぐとき、夫婦喧嘩や遺産相続の話し合いにすら。彼はただそこにいて、...
SF

#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
ちいさな物語

#421 ウィジャボードの夜

大学二年の夏、僕は友人の洋平と美咲に誘われて、アパートの一室でウィジャボードをすることになった。夏休みだったのでちょっと怖い遊びをしてみたかったんだろう。ボードには文字や数字が並び、プランシェットを動かす遊びだということくらいは知っていたが...
ちいさな物語

#418 黒い水面

最初に異変が起こったのは、静かな朝だった。「なあ、あれ……何だ?」公園の池を覗き込んでいた男が、呆然と呟いた。普段は穏やかに波打つ水面が、何かに侵食されるように黒くうごめいていた。虫だった。小さな甲虫のような形状だが、明らかに普通の昆虫とは...
ちいさな物語

#417 深夜二時の無言電話

深夜二時、携帯の留守番電話に非通知の着信履歴が残っている。最初の1、2回は気にも留めなかった。「間違い電話だろう」そう思って履歴を削除した。だが、それは毎晩、同じ時刻に繰り返される。留守電も残っており再生してみると、録音されているのはただの...
ちいさな物語

#414 白い回廊の夢

昼寝をすると、決まって同じ夢を見る。どこまでも続く白い回廊。高い天井には巨大なステンドグラスがはめ込まれ、そこから淡い光が差し込んでいる。夢の中の僕は、その回廊を歩いている。最初は何もなかった。ただ、歩き続けるだけだった。しかし、ある日を境...
ちいさな物語

#411 ニンゲンモドキ育成ゲーム

いや、ちょっと変な話をするけどさ、聞いてくれるか?ほら、昔からあるだろ、「育成ゲーム」ってやつ。卵からモンスターが孵ったり、仮想のペットを世話したりするあれだ。俺も子どもの頃にハマってな、学校でこっそりやっては先生に取り上げられたもんだよ。...
イヤな話

#409 割り勘モンスター

聞いてくれよ。俺が前の会社にいた頃の話だ。飲み会がな、とにかく気が重くて仕方がなかった。理由はひとつ――経理課の鈴木先輩がいるからだ。あの人、酒も食い物も底なしでな。いわゆる食い尽くし系。乾杯するやいなや「ビール10杯! 串盛りも大盛りで!...