ぞわっとする

ちいさな物語

#447 街灯の下の影

街灯がともる、その一瞬だけ。光の輪の中に、いつも誰かが立っている。一度見た者は、何度でも見てしまう。
ちいさな物語

#445 飢えの名前

あんたにも経験はあるんじゃないか?夜中にふと、ラーメンが食べたくて仕方なくなるとか、やけに甘いものを欲するとか。誰にでもあるんじゃないかと思う。これはただの気まぐれみたいなものだと思うだろう。でもな、俺の場合はちょっと違ったんだ。最初は小さ...
ちいさな物語

#444 戻らない交渉人たち

あれは今でも夢に見る出来事です。ある日、街の雑居ビルで立て籠もり事件が起きました。銃を持った男が部屋に閉じこもり、人質を取っているという。僕は交渉人ではなく、ただの警察官でしたが、現場に動員されていました。最初に向かったのは、ベテランの交渉...
ちいさな物語

#443 呪屋繁盛記

あんた、呪屋って知ってるかい?そう、最近はやたら耳にするだろ。アニメや漫画の影響で、若いやつらの間じゃちょっとしたブームになってんだ。実は俺、その呪屋をやってるんだよ。元々は細々とした商売でね、頼みに来るのは本当に切羽詰まった人間ばかりだっ...
ちいさな物語

#441 隣人たち

不思議なことが起きたのは、僕がこのアパートに引っ越してきてからすぐのことでした。隣の部屋の住人が、毎日違う人になっているんです。初日は若いサラリーマン風の男でした。挨拶を交わしたときは感じのいい人で、「こちらこそよろしくお願いします」と笑っ...
ちいさな物語

#439 不思議なカプセル

最初にそのガチャガチャを見つけたのは、廃れたショッピングモールの一角だった。他の店はとっくに閉まり、テナント募集の張り紙が並ぶ中、ぽつんと置かれた一台の機械。赤と青の色はすっかり褪せて、透明のケースも黄ばんでいた。暇つぶしに百円玉を入れてハ...
ちいさな物語

#437 耳の奥の声

あれは数年前のことです。通勤途中、いつものように電車で音楽を聴こうとイヤホンを耳に差し込んだ瞬間、不思議な声がしたんです。「……聞こえるか?」僕は思わずイヤホンを外しました。周囲を見渡しても、誰も僕に話しかけていない。車内は新聞を読む人やス...
SF

#432 みらいさま

むかしむかし、ある山あいの村に奇妙なものが落ちてきたそうな。夜の空が昼のように明るくなり、どーんと火の玉がすっと降りてきて、畑の真ん中に黒い箱を残したのじゃ。村人たちは驚いて集まり、その箱を囲んだ。「これはなんじゃ」「火薬か、それとも鬼の道...
ちいさな物語

#429 後ろの行列

あれは、本当に妙な体験だったんですよ。会社帰りにいつもの道を歩いていたら、後ろから足音が聞こえたんです。最初は一人分の気配でした。まあ、夜道だし誰かが同じ方向に歩いているんだろうと気にしませんでした。でも、その足音がぴたりと僕の歩調に合って...
ちいさな物語

#427 ぼくの遠足

【9月25日】今日は先生が遠足のことをはなしてくれた。来月のはじめに行くんだって。行き先はまだひみつだけど「ふつうの場所じゃないからお楽しみに」と言ってた。どんなところだろう。ワクワクして、友だちと帰り道にずっとその話をした。【9月27日】...