ぞわっとする

イヤな話

#147 近すぎる叔母

「昨日、デート楽しかったんでしょ? あの人、いい感じ?」近所に住む叔母が不意に私に聞いてきた。驚きで喉が詰まった。確かに昨日、初めてのデートだったが、誰にも話していない。「どうしてそれを?」叔母はいたずらっぽく笑っている。「そんなのすぐわか...
ちいさな物語

#144 夜の司書

「また本が動いてる……」夜勤の警備員になって三日目、私は震えながら監視モニターを指差した。画面に映るのは閉館後の公共図書館。暗闇の中、棚から本が静かに抜け出し、ひとりでに別の場所へと動き始めている。誰もいないはずなのに。数日前から、この図書...
ちいさな物語

#136 事故物件専門不動産屋

「どんな事故物件でも取り扱っております」そう掲げた小さな不動産屋に、またひとり奇妙な客が現れた。細身で色白、瞳の奥に妙な光を宿した男。彼は入ってくるなり、まっすぐ店主・長谷川を見つめて言った。「事故物件、できるだけヤバいやつを」長谷川は慣れ...
ちいさな物語

#129 感染する怪談

「この話を聞いたら、お前も同じ目に遭うよ」そう言って、友人の中村は妙に真剣な顔をした。「……何の話だよ」「伝染する怪談さ」久しぶりに学生時代の友人たちと飲み会を開いた。帰り道、深夜の公園のベンチで、俺と中村は二人で酔いざましと称してぐだぐだ...
ちいさな物語

#121 行灯さま

お前さん、どうせ退屈してるだろう。待っている間、昔話でも聞かないかい?ほら、耳を貸してごらん。むかしむかし、ある嵐の夜の話さ。山奥で暮らす若者、名前はタロって言ったかな。そいつが猟に出て、帰り道で道に迷っちまった。風がビュウビュウ吹いて、木...
ちいさな物語

#119 隣の家の花

俺が住んでいるのは、普通の住宅街だ。静かで、のどかで、特に変わったこともない。そう思っていた。あの花を見るまでは。隣の家の庭には、大きな花が咲いている。鮮やかな赤色で、肉厚の花びらが妙に生々しい。南国のジャングルに咲いていそうなイメージだ。...
イヤな話

#117 やさしすぎるブラック企業

「世界で一番やさしいブラック企業、か……」ユウマはスマホの画面を見つめながら呟いた。求人サイトで偶然見つけたその会社の募集要項には、こう書かれていた。・未経験歓迎! 学歴不問! やさしく指導します!・24時間365日勤務可能な方歓迎!・休日...
ちいさな物語

#116 開けてはいけない

「古い家なので、あまりそこら中あけたてしない方がいいですよ」不動産屋は鍵を渡すとき、なんだか歯切れの悪い言い方で忠告してきた。古い平屋の一軒家。築100年以上という、味のある古民家だ。確かに派手にいじりまわすと普請が必要になるかもしれない。...
ちいさな物語

#111 致命的なタイプミス

「このキーボードは、打った言葉を現実にする」店主にそう言われて、俺は半信半疑でその黒いキーボードをながめる。古道具屋にキーボードというのがめずらしくて、俺はそれを手に取っていた。どこにでもある普通のキーボードと変わらない。ただ、モニターにつ...
ちいさな物語

#109 終演後の笑い声

売れない芸人の吉村は、漫才師として最後のチャンスを掴もうと、地方の古い劇場にやってきた。その劇場は「必ず笑いが取れる」というジンクスで知られていたが、どこか陰気な雰囲気が漂っていた。「どんなネタでも笑いが起こるなんて、ウソだろ」相方の健太が...