ぞわっとする

ちいさな物語

#296 幽霊探偵あらわる

「頼むよ、俺が見えるのはお前だけなんだ!」必死の形相で俺にすがってきたのは、自ら「死んだ」と言い張る男――山岸拓也だった。俺はただ呆然と立ち尽くす。俺だって幽霊なんか好き好んで見たくない。けれど生まれつき見えてしまう体質なのだから仕方ない。...
ちいさな物語

#295 月下のマネキンたち

郊外にあるその廃墟は、かつては賑やかな繁華街の中心にあった百貨店の跡地だった。華やかなネオンと人々の活気が溢れていたはずの建物は、今では朽ち果て、ひっそりとした不気味な沈黙に包まれている。この場所には幾つもの都市伝説があった。その真相を確か...
ちいさな物語

#294 三つの扉

古い屋敷の奥、埃まみれの廊下の突き当たりに、三つの扉が静かに並んでいた。噂には聞いたことがあったが、本当にあるとは思わなかった。金色、銀色、そして黒――いずれも古びた装飾がなされているが、妙に目を引く輝きを放っている。私は親戚の遺品整理の手...
ちいさな物語

#291 小さな木こりと白い狼

むかしむかし、ある深い山奥の村に、力のない小さな木こりがおったんじゃ。名前を吾作というてな、村で一番ちっこい身体じゃったが、働き者で心根の優しい男じゃった。ある日、吾作が山で道に迷ってしまったんじゃ。日も暮れかけ、途方に暮れておったところ、...
ちいさな物語

#289 俺は勇者の仲間になりたかった

俺は勇者に憧れていた。子供の頃からのゲームオタクで、勇者たちの冒険物語に夢中。いつか必ず勇者の仲間として魔王を倒す――その夢を叶えるために、俺は可能な限りあらゆる修行を積んだ。そして、交通事故からの異世界転生と、とんとん拍子に話は進む。転生...
ちいさな物語

#287 洗面器の中の声

「うわっ、なんでお前、洗面器かぶってんだよ!」深夜のコンビニ、俺の目の前に現れたのは大学の友人・拓也だった。いつもは理論派で冷静沈着。課題提出前でもテンパることのない男が、堂々と洗面器を頭にかぶって突っ立っていた。「え? お前、何やってんの...
ちいさな物語

#284 羅針盤の指す方

あの日、終電を逃してしまい、人気のない路地を歩いていた。街灯は薄暗く、遠くから犬の鳴き声が響くだけだった。そんな中、足元で何かが光った。拾い上げると、それは古いコンパスだった。いや、アンティークのような洒落たデザインでコンパスというよりは羅...
ちいさな物語

#283 笑いの通り魔

「あの『笑いの通り魔』って、実は幽霊らしいよ」そんな話を聞いたのは数日前、会社帰りの居酒屋だった。街で噂の『笑いの通り魔』とは、夜道を一人で歩いていると、突然現れてジョークを叫び、人を笑わせて去っていくという謎の存在らしい。物騒な話ならごめ...
ちいさな物語

#282 増殖するこけし

「これ、もらってくれる?」隣に住むおばあさんがそう言って、僕に一体のこけしを手渡してきた。手のひらサイズの、素朴で、わずかに微笑を浮かべたような顔のこけし。「昔、部屋に置き場所がなくなってしまってねぇ」と、おばあさんはにこやかに言った。僕は...
ちいさな物語

#279 スーパーマーケットの地下

その日、私はいつものように仕事帰りにスーパーに立ち寄った。時計の針は夜九時少し前を指し、閉店間近の合図である「蛍の光」が静かに流れている。慌てて食材を選んでいると、野菜売り場の端に、見慣れない小さな看板が目に入った。『地下フロア行きはこちら...