ぞわっとする

ちいさな物語

#567 会議室の完璧な存在

その機械が一般企業の会議室に普及して以来、ビジネスマンの仕事への姿勢は頭上のホログラムによって丸わかりになってしまった。SG(スリープ・ゲージ)――脳波から睡眠欲求を読み取り、ゼロから100までの数値で可視化する装置。それは、個人の体調管理...
ちいさな物語

#548 闇の中の声

今日は少しだけ残業かなと思ったとき、地震が来た。初めはすぐ収まると思った。――が、その瞬間、ビル全体が獣のような音を立ててうねりだす。照明が一斉に消え、非常灯すら見えない。気がつくと辺りは真っ暗だった。闇は、思っていたよりも濃い。自分の手を...
イヤな話

#537 幸福の抜け殻

隣の芝生は青い、という言葉がある。だが、私の家の隣にある芝生は、青いどころか発光しているんじゃないかと思うほどに眩しかった。数年前に越してきた工藤家のことだ。旦那さんは大手商社勤務で、毎朝爽やかな笑顔でジョギングを欠かさない。奥さんは料理上...
ちいさな物語

#535 ビジネスホテル奇譚

出張で地方都市のビジネスホテルに泊まった夜のことだ。エレベーターを降りると、薄暗い廊下の奥に402号室があった。――部屋の番号が不吉すぎる。4階の2号室なんて、怪談に出てきそうな部屋番号ではないか。そんなことを考えていたからだろうか、部屋に...
ちいさな物語

#534 折り鶴の悪魔

あの時の話をすると、決まってみんな笑うんだ。「ストレスで頭がおかしくなったんじゃない?」なんてね。でも嘘でも冗談でもない。本当に起きたことなんだ。聞いてほしい。あれは、まだ寒さの残る春先の午後だった。その日、会社で腹の立つことがあった。いや...
ちいさな物語

#531 恐れるべきもの

幼いころから幽霊が見えると言うと、人は決まって「え、怖くないの?」と聞いてくる。正直、怖いというか――意味がわからない。そもそも本当に幽霊と呼んでいいものなのかもよくわからない。元は生きていた人間という証明がどこにもないし、その「幽霊」自身...
ちいさな物語

#530 機械の虫

最初に見つけたのは、庭の鉢植えの脇でした。カナブンくらいの大きさの虫がひっくり返っていて、足をばたつかせていたんです。よくある光景だと思うでしょう?でも、近づいた瞬間、違和感に気づきました。足のつけ根に、小さなネジが見えたんですよ。ネジなん...
ちいさな物語

#529 縁切り鋏

骨董屋で縁切り鋏というものを手に入れた。見た目はただの古びた鋏で、刃は少し欠けていた。骨董店の主人の話によると――「その鋏で縁を切りたい人の名前を書いた紙を切るとね、その人の記憶から君が消える。便利だろ?」「便利」という表現が何か違うような...
ちいさな物語

#525 回転ドアが終わらない

駅ビルの入口にある回転ドアは、ごく普通のガラス製だった。そのときも、いつもと変わらないように見えた。それなのに――用事を済ませた私がドアへ足を踏み入れた瞬間、空気がひやりと反転したような感覚が走った。外は寒いのかもしれないと思いながら、半周...
ちいさな物語

#522 永遠にかくれんぼ

夏の夕暮れ、校庭の裏で始まった、ただのかくれんぼがすべての始まりだった。私が十歳のとき、同級生の子供たちと遊んでいた。鬼になったハルは目をつぶって十秒数えはじめ、私たちは散り散りに逃げた。その日、私は用具倉庫の裏に身を潜めていた。鬼が動き出...