ぞわっとする

SF

#536 地球引越し計画

地球を丸ごと引越す、と博士が言い出した。朝のニュース番組で突然その一言が流れた瞬間、コメンテーターは誰も口を開かなかった。台本になかったんだろう。しんと静まり返っている。司会者がなんとか場をつなごうとして拍手した。「すごいですねっ!」発言し...
ちいさな物語

#535 ビジネスホテル奇譚

出張で地方都市のビジネスホテルに泊まった夜のことだ。エレベーターを降りると、薄暗い廊下の奥に402号室があった。――部屋の番号が不吉すぎる。4階の2号室なんて、怪談に出てきそうな部屋番号ではないか。そんなことを考えていたからだろうか、部屋に...
ちいさな物語

#534 折り鶴の悪魔

あの時の話をすると、決まってみんな笑うんだ。「ストレスで頭がおかしくなったんじゃない?」なんてね。でも嘘でも冗談でもない。本当に起きたことなんだ。聞いてほしい。あれは、まだ寒さの残る春先の午後だった。その日、会社で腹の立つことがあった。いや...
ちいさな物語

#531 恐れるべきもの

幼いころから幽霊が見えると言うと、人は決まって「え、怖くないの?」と聞いてくる。正直、怖いというか――意味がわからない。そもそも本当に幽霊と呼んでいいものなのかもよくわからない。元は生きていた人間という証明がどこにもないし、その「幽霊」自身...
ちいさな物語

#530 機械の虫

最初に見つけたのは、庭の鉢植えの脇でした。カナブンくらいの大きさの虫がひっくり返っていて、足をばたつかせていたんです。よくある光景だと思うでしょう?でも、近づいた瞬間、違和感に気づきました。足のつけ根に、小さなネジが見えたんですよ。ネジなん...
ちいさな物語

#529 縁切り鋏

骨董屋で縁切り鋏というものを手に入れた。見た目はただの古びた鋏で、刃は少し欠けていた。骨董店の主人の話によると――「その鋏で縁を切りたい人の名前を書いた紙を切るとね、その人の記憶から君が消える。便利だろ?」「便利」という表現が何か違うような...
ちいさな物語

#526 アニマルファンタジー

登山を決行した朝は、ひんやりした空気に満ちていた。俺たち四人は久しぶりに会って、楽しく山を登っていた。大学で出会い、サークル活動を通して仲良くなり、長い時間を一緒に過ごした四人組。就職して半年、ようやく予定が合って登山の計画を立てることが出...
ちいさな物語

#525 回転ドアが終わらない

駅ビルの入口にある回転ドアは、ごく普通のガラス製だった。そのときも、いつもと変わらないように見えた。それなのに――用事を済ませた私がドアへ足を踏み入れた瞬間、空気がひやりと反転したような感覚が走った。外は寒いのかもしれないと思いながら、半周...
ちいさな物語

#523 山からなんか来た

山からなんかきた日、俺はちょうどプリンを食べていたが、そのことはこのエピソードにまったく関係ない。とにかくそれは突然、町の放送スピーカーから始まった。「えー……山から……なんか来ています。以上」以上じゃない。「なんか」ってなんなんだよ。熊か...
ちいさな物語

#522 永遠にかくれんぼ

夏の夕暮れ、校庭の裏で始まった、ただのかくれんぼがすべての始まりだった。私が十歳のとき、同級生の子供たちと遊んでいた。鬼になったハルは目をつぶって十秒数えはじめ、私たちは散り散りに逃げた。その日、私は用具倉庫の裏に身を潜めていた。鬼が動き出...