ぞわっとする

ちいさな物語

#426 笑いの迷宮

あれは、ほんの出来心だったんです。仕事帰りに見かけた細い路地にふと足を踏み入れました。その路地は他の道とは全然雰囲気が違ったんです。看板もなく、行き止まりのはずなのに、奥に暗いアーチのような入口が口を開けていたんです。まるで「入ってみろ」と...
ちいさな物語

#425 盤上に消える

古びた喫茶店の片隅に置かれた知らないボードゲーム。遊んだ仲間の一人が、次のターンが来る前に姿を消した。ゲームは続き、盤上の駒は消えた友人の席を指し示す。恐怖と好奇心の板挟みのまま、残された者たちはダイスを振る手を止められなかった。(文字数:...
ちいさな物語

#421 ウィジャボードの夜

大学二年の夏、僕は友人の洋平と美咲に誘われて、アパートの一室でウィジャボードをすることになった。夏休みだったのでちょっと怖い遊びをしてみたかったんだろう。ボードには文字や数字が並び、プランシェットを動かす遊びだということくらいは知っていたが...
ちいさな物語

#417 深夜二時の無言電話

深夜二時、携帯の留守番電話に非通知の着信履歴が残っている。最初の1、2回は気にも留めなかった。「間違い電話だろう」そう思って履歴を削除した。だが、それは毎晩、同じ時刻に繰り返される。留守電も残っており再生してみると、録音されているのはただの...
ちいさな物語

#411 ニンゲンモドキ育成ゲーム

いや、ちょっと変な話をするけどさ、聞いてくれるか?ほら、昔からあるだろ、「育成ゲーム」ってやつ。卵からモンスターが孵ったり、仮想のペットを世話したりするあれだ。俺も子どもの頃にハマってな、学校でこっそりやっては先生に取り上げられたもんだよ。...
イヤな話

#409 割り勘モンスター

聞いてくれよ。俺が前の会社にいた頃の話だ。飲み会がな、とにかく気が重くて仕方がなかった。理由はひとつ――経理課の鈴木先輩がいるからだ。あの人、酒も食い物も底なしでな。いわゆる食い尽くし系。乾杯するやいなや「ビール10杯! 串盛りも大盛りで!...
ちいさな物語

#408 隣のデスクの男

「え、なんか……全然知らないやつが僕の席のとなりにいるんだけど?」これが、僕が最初に思ったことだった。月曜日の朝。カフェインとエナジードリンクのダブルパンチで無理やり目を開かせて出社した。いつものように自分のデスクに座ろうとしたとき、違和感...
ちいさな物語

#407 メタモルフィット

「……誰だ、これ」全身鏡の前に立ち、浩介は息をのんだ。鏡の中の男は確かに自分のはずだった。だが、以前の自分とはまるで別人のようだ。二重あごは消え、ぽっこり出ていた腹は平らになった。顔の輪郭は鋭く、目つきまで変わった気がする。ずっと履けなかっ...
ちいさな物語

#406 ホラー道場深夜の稽古

真夜中の二時。布団の中で動画を眺めていた俺の前に、唐突にそれは現れた。白い服、長い黒髪。いかにも幽霊という見た目だ。だが、問題は「演技」だった。「う、うら……め……しやぁ……」語尾が上ずり、間の取り方も悪い。足はしっかり床についており、ただ...
ちいさな物語

#398 光の怪談

普通、怪談といえば暗い夜道とか、薄暗い廃墟とかを想像するだろ?でもな、俺が体験したのは逆だったんだ。「明るすぎる場所」ってのが、いちばん怖かったんだよ。あれは学生のころ。友人たちと夜の街をふらついていて、ひとりで帰ることになった。夜十時を過...