ぞわっとする

ちいさな物語

#494 しりとりの家

町のはずれ、杉並木の奥に古い屋敷がある。窓はどこも板で打ちつけられていて、風が吹くたび、ぎいぎいと鳴っていた。その屋敷は小学生のあいだで噂になっていた。「中の間取り、しりとりになってるんだってさ」「しりとり?」「そう。変な名前の部屋がしりと...
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#493 山の神の約束

この里には『白霧の峰』という山があってな、そこは神さまの棲む山ゆえ、決して鉄を持ち込んではならん、という掟があったんじゃ。けれどその年は雪が深うて、獲物もおらず、里の者は飢えておった。与作の妻は腹に子を宿しておったし、与作もとうとう我慢がな...
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#483 開かずの扉、開けます

俺の仕事は、開かずの扉を開けること。簡単に言えば、開けちゃいけない扉を開ける専門家。依頼があれば、どんな場所でも行く(出張費はいただきます)。仕事の分類上は鍵師だ。しかし鍵のかかった扉なら本物の鍵師がやる。俺の仕事はその後、鍵以外の超常的な...
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#480 六角の席

その日は教室の席替えの日だった。いつもなら机を動かして終わりなのに、急に担任が妙に楽しげに言った。「今日から特別な配置にする。六角形だ」うちの担任は少し変わっていて、いきなりこういうことをしだすのはよくあることだった。クラス中が「ハイ、ハイ...
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#478 コピー室の斉藤

コピー室の斉藤。うちの会社で彼を知らない人間はいない。どんなに面倒な資料でも、彼に頼めば数分で完璧に仕上げてくれる。しかもミスゼロ。パンチ穴の位置、ステープラーの角度、用紙の混在――全部、彼の中に設計図でもあるかのように的確。「斉藤くん、コ...
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#476 悪魔の描かれた部屋の絵

あれは、今でもはっきり思い出せる。静かな雨の日だった。仕事帰り、駅までの近道を探して裏通りに入ったら、古い木造の建物があった。「八重画廊」と小さな看板に書かれていた。窓越しに見えた明かりに誘われて、なんとなく中へ入ったんだ。ベルの音が鳴った...
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#475 ツッコミは2秒以内

勇者として選ばれたとき、正直、少しだけ泣いた。幼い頃からの夢だったからだ。剣に選ばれ、神託を受け、命に代えても魔王を倒す。それが俺の運命――のはずだった。しかし、初めて仲間と顔を合わせた瞬間、これまでゆるぎなかった自分の運命に疑問を抱いた。...
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#474 トンネルの中

その子に出会ったのは、本当に偶然だった。あの日、僕は出張帰りで、地方のローカル線の無人駅に降りた。帰りのバスまで時間があって、少し散歩でもしようと駅前の坂道を登っていたときだ。人通りなんてまったくない。途中の古びた案内板には、「隣町へ通じる...
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#473 降りない人

住んでいるマンションのエレベーターで、いつも乗り合わせる人がいる。それは40代くらいの男性で、特に特徴のない普通の格好をしている。私は自分の部屋のある上の階に行くため、エレベーターを下で待っている。すると、上から降りてきたエレベーターにその...
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#472 感染した町

あれが始まったのは、去年の秋頃だったと思う。最初に気づいたのはうちの近所の商店街だった。いつも歩いているはずの通りが、ある日、一本増えていたんだ。「え? こんな路地あったっけ?」って感じで。でも、人間というのは不思議なもので、知らない道を見...