文字数900字以下、本当に3分で読める短い物語8本。
すきま時間にどうぞ。コメディあり、しっとりあり、寓話あり、いろんな味で。
この棚の8本

#130 木蓮の歌
祖母の家の庭には、大きな木蓮の木があった。春になると白い花が咲き誇り、甘く濃厚な香りを漂わせる。その美しさもさることながら、僕にはずっと気になっていることがあった。それは——木蓮が歌うこと。咲いている時期だけ、微かな歌声が聞こえるのだ。「お...

#016 新米時空警察の大失敗
あの日、僕は時空警察の新人で、時空観測室のモニター番を任されていました。先輩たちはみんな出動中で、僕一人だけ。そんな時に限って、異常が発生するんですよね。モニターに映ったのは、紀元前300年頃のギリシャ。大哲学者アリストテレスが街角で何やら...

#023 瞳をとじて
昨夜は気の置けない友人たちと宅飲み鍋パーティだった。しかし気がつけばソファで寝ていて、僕の顔には見事なまでの「芸術」が施されている。左頬にはへのへのもへじの何やら卑猥なマーク。右頬には萌え絵風の女の子。おでこには「休暇中」と大きく書かれてい...

#045 口の悪い鏡
あれは引っ越して間もない頃でした。新居の洗面所についていた古びた鏡が妙に気になっていて。縁に細かい傷や汚れがあったけれど、それも味があると思ってそのまま使うことにしていたんです。でもある朝、顔を洗おうと鏡に向かうと、低い声が聞こえたんです。...

#089 あさりの味
海辺の町を訪れたのは、もう何度目だっただろうか。海岸沿い特有の潮風がまとわりつくような空気はやはり体に馴染んでいる。小さな食堂に入り、私は大好きだった“それ”を頼んだ。そう、あさりの味噌汁だ。箸でそっと貝殻を持ち上げる。殻の内側はつるりとし...

#012 パワハラ課長とカブトムシ
最近、うちの課の空気は最悪だ。パワハラが絶えない課長のせいで、社員のやる気は地に落ちている。変なセミナーで感化されて、全員変な体操をさせられたり、A4サイズのコピー用紙いっぱいになるまで社訓を繰り返し書かせたり、査定をチラつかせてやりたい放...

#188 呪われた黄金都市
父親も母親も仕事で忙しく、さみしさにかられた少年はふと呟いた。「ねえ、神様、空からお金が降ってくれば、僕はお父さんとお母さんと、毎日一緒にいられるのに」翌朝、本当にそれが現実となった。はじめは誰もが夢だと思った。だが窓を開けると黄金の硬貨が...

#028 地下鉄の幽霊が陽キャだった件
終電の地下鉄って、静かで好きなんだよな。疲れた人たちがほとんど無言で座ってる、あの感じが妙に落ち着く。俺も仕事帰りでヘトヘトだったから、席に腰を落ち着けてスマホで推しのライブ動画でも見ようと思ったんだ。でも、その日は違った。車両の端っこで、...
他の棚もどうぞ
違う気分のときは、こちらから。
