ぞわっとする

ちいさな物語

#209 殺人犯の声

その能力に気づいたのは、駅のホームだった。残暑の厳しい日差しの中、僕は自動販売機でコカ・コーラのペットボトルを買った。シュッと開けた蓋の音と共に、炭酸が弾ける音が心地よく耳に響いた。「……電車遅いな、また遅刻しちゃうよ」誰かが呟く声が聞こえ...
ちいさな物語

#203 コンビニ迷宮

深夜二時、急に甘いものが食べたくなって、近所のコンビニへ向かった。住宅街の端にある、小さな店。通い慣れた場所だった。自動ドアが、いつもの電子音を立てて開く。けれど、妙だった。店員の姿が見当たらない。深夜ならバックヤードにいるかもしれない。こ...
ちいさな物語

#199 赤信号の理由

夜勤明け、午前3時。住宅街を抜ける細い道にある、三叉路の信号。小さな交差点なのに、なぜか夜中でもちゃんと動いている。だが、不思議なことに、そこに差しかかるといつも赤信号なのだ。誰もいない。車も通らない。なのに赤。ひたすら赤。そしてかなりの時...
イヤな話

#196 理想の職場

「ここが、『理想の職場』だよ」そう言われてドアを開けた瞬間、僕は思った。……臭う。いや、においではない、雰囲気が臭う。なんだこれは。「ようこそ新入り!」金髪リーゼントでガムをクチャクチャしながら近寄ってきたのは、田中課長だ。初対面で肩パンさ...
ちいさな物語

#191 呪いのラリー

最近、どうも体調が悪い。夜眠れず、食欲もない。朝起きると必ず部屋に長い髪の毛が散らばっている。自分の髪ではない。職場でそのことを話すと、後輩が冗談交じりの口調で「それ、呪われてるじゃないですか?」と言いだした。そんな非現実的なことは信じてい...
ちいさな物語

#190 掛け軸の中から

祖父が亡くなり、古い家を整理していると一幅の掛け軸が出てきた。
墨で描かれた山水画。穏やかな山々と静かな川の流れが広がり、遠くには霞がかかっている。なかなか見事で美しい軸だった。しかし、その掛け軸を掛けて以来、夜になるとどこからか水の音が聞...
ちいさな物語

#173 後ろ向きの写真

全員が背を向けて写る、古い家族写真。「この中の一人と目が合ったら死ぬ」——祖母はそう言い遺していた。
ちいさな物語

#172 選択肢の多い料理店

薄暗い夜道で空腹を抱え歩いていると、真新しい料理店を見つけた。ネオンの看板には「セルフサービスレストラン」と書かれている。入り口は無人で、自動ドアをくぐると、中には無機質なタッチパネルが並んでいた。僕は空腹に急かされ、画面をタップした。『よ...
ちいさな物語

#158 空色の続き

「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める...
イヤな話

#156 編みもやし

最初に「編みもやし」を見たのは、テレビの料理番組だった。「今、大流行の編みもやし! もやしを編んで料理すると、驚きの食感に!」そう言いながら、司会者が皿を掲げた。画面には、見たこともない奇妙な料理が映し出される。細いもやしが編み込まれ、綺麗...