寝る前に

ちいさな物語

#601 多すぎた祝福

王子の誕生に、二千もの妖精が祝福を授けた。完璧に生まれついた王子に、ただひとつだけ、足りないものがあった。
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#600 桃色の花の国と戦神

昔々、あるところに、それはそれはうつくしい小さな国があったんだよ。その国は一年中、やさしい桃色の花が咲き乱れていてね、まるでおとぎ話のような場所だったんだ。人々はみな豊かで心やさしく、争いごとはほとんど起きなかった。その国は少年の姿をした「...
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#595 夜をつかまえた

なあ、信じてくれるか分からないけど、俺、「夜」を飼ってたことがあるんだ。いや、比喩じゃなくて文字通りの意味でさ。あの日、まだ空が白み始めたばかりの午前五時くらいだったかな。散歩に出ようとしたら、マンションの植え込みの下に、なんだか黒くてキラ...
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#592 五人の僧侶

昔々、あるところに、ひとりの旅人がおったんじゃよ。その旅人はな、自分の蓄えさえ乏しいのに、困っている人を見ると放っておけない。それはそれは心のやさしい男だったんじゃ。ある時、男は険しい山道を越えて、遠くの町へと向かっておった。山の中は風が冷...
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#591 時喰らいの呪い

王都に最初の春の風が吹き抜けた日、凶暴な「時喰らい」の首を馬上に下げた騎士団長アルドが黒鉄の門をくぐって帰還した。胸当ては深く裂け、肩には鋭い爪痕が四本、血はまだ乾ききっていない。それでもアルドは手綱を放さず、部下たちに指示をとばしている。...
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#588 サービスタイム

うちの近所のスーパーは、夕方六時を過ぎると空気が変わる。惣菜コーナー周辺を中心に客の様子が不自然になるのだ。誰もが興味なさそうな顔をしながら、何度も同じ場所をうろうろし始める。全員、似たような軌道を描きながら、回遊魚のごとく店内を回り始める...
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#580 持ち帰り

私は、ごく普通のサラリーマンだ。特別な才能があるわけでも、霊感があるわけでもない。少なくとも、先月のあの日まではそう信じていた。私の「とある変化」に、何かのきっかけがあったのかどうか、それすらよくわからない。あの日、仕事の都合で、私は地方の...
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#579 はさまれているもの

市立図書館で働きはじめて三日目、返却ポストの中から、私は一冊の古い短編集を手にしていた。背表紙は日に焼け、表紙もびっくりするほどぼろぼろだ。随分と古い本だなと、パラパラとめくってみた。すると、頁の間から薄い和紙に包まれた麦の穂が一本、はらり...
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#577 意識高い系ねこの哲学

雨の降る土曜日だった。路地裏の段ボール箱にいたのは、震える子猫……ではなく、どこか遠い未来を見据えているかのような眼差しをした一匹のサバトラ猫だった。「ニャア(お前、リソースに余裕はありそうだな。アライアンスを組まないか?)」猫の鳴き声と二...
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#576 雨を飼う

そのペットショップは、路地裏に隠れるように存在していた。看板には「気象標本・動植物取扱店」と掠れた文字で書かれている。気象標本とはなんだろう……私は興味本位で店内に足を踏み入れた。気象標本の例として店主の老婆から手渡されたのは、青白く光る小...