すきま時間に

SF

#090 ネオン街のヘンゼルとグレーテル

ナイトシティのスラム街。そこに生きる者は皆、飢えと暴力に耐えながら暮らしている。ヘンゼルとグレーテルも例外ではなかった。「また、食べ物探しに行くの?」妹のグレーテルが、不安そうに兄のヘンゼルを見上げる。「他に生きる道があるか?」二人は孤児だ...
ちいさな物語

#089 あさりの味

大好きだったあさりの味噌汁。なのに、もう、あの味がわからない。失われていくのは、味か、それとも——。
イヤな話

#088 並ばない女

コンビニのレジ。横から、ひとりの女がためらいもなく割り込んできた。まるで、そこが自分の場所だと信じきったように。
ちいさな物語

#087 祖母のわらび餅

夏になると祖母が手作りのわらび餅を作ってくれた。冷たい井戸水で締めたそれは、ぷるんと透き通り、きなこと黒蜜がたっぷりかかっていた。口に入れると、まるで澄んだ水のかたまりのように清らかな味がする。「おばあちゃんのわらび餅って、なんだか夢みたい...
ちいさな物語

#086 わたしを知っていますか

その日、僕は大きなスクランブル交差点にいた。青信号に変わると、群衆が一斉に動き出す。まるで波のように人が押し寄せ、すれ違い、散らばっていく。そんな中、僕はふと足を止めた。向こう側から歩いてくる一人の女性と目が合ったのだ。一瞬、時間が止まる。...
ちいさな物語

#085 11時43分

このマンションに引っ越してきて、一ヶ月が経つ。仕事にも慣れ、夜は静かに過ごせるかと思っていた。だが、あることが気になっている。——毎晩、天井から音がするのだ。最初は気にしなかった。マンションなら生活音が響くのは仕方がない。だが、不思議なこと...
ちいさな物語

#084 生活実態調査の実態

届いたアンケート結果はデタラメだらけ。なのに、おかしいのは自分だけらしい。ずれているのは、世界か、俺か。
ちいさな物語

#083 廃駅の階段

聞いてくれ、俺はただの階段だ。だけど、俺が見た光景を話したら、きっとお前も興味を持つだろう。この廃駅には、いろんな人間が来るんだ。俺はもう使われなくなった駅の階段。錆びた手すりに苔むした段、それが俺の全てだ。何十年も前に列車が通らなくなって...
ちいさな物語

#082 究極のピザ

「いや、だからパイナップルはピザに合わないんだって!」「お前の方こそ、アンチョビの塩辛さを理解してない!」僕とルームメイトのケンは、ピザのトッピングについて激しく口論していた。もともとは仲のいい大学の同級生だったのに、この問題に関してだけは...
ちいさな物語

#081 転がってゆく先

俺か? 俺はただの空き缶さ。最初はちゃんとした飲み物だった。工場で作られ、店に並び、人間に買われ、そして——飲まれた。そこまではまあ、よくある話だ。問題はその後だ。飲み終わった俺は、ポイッと道端に投げ捨てられてしまった。ガードレールにぶつか...