すきま時間に

ちいさな物語

#080 死神の鳥

最初に気づいたのは、駅のホームだった。目の前のサラリーマンの頭に、小さな黒い鳥が止まっていた。カラスのように見えるが、もう少し小さい。それにどこか質感が、違う。まるで影が形を成したような、ふわふわとした不確かな存在だった。周囲の人々は誰も気...
ちいさな物語

#078 行列の先にあるもの

その日、俺は仕事帰りに駅前の広場を通った。いつもなら通り過ぎるだけの場所なのに、今日は何かがおかしかった。――行列だ。ものすごく長い行列ができている。最初は人気のスイーツでも売っているのかと思った。でも、列に並んでいる人たちはみんなスマホを...
ちいさな物語

#077 雪山で待つ者

山頂を目指していた私は、突如として吹雪に巻き込まれた。冬山では天候の急変が命取りになることを知っていたが、ここまでひどいとは。油断したと認めざるを得ない。視界は数メートル先も見えず、足を踏み出すたびに雪に沈む。体温が奪われ、指の感覚がなくな...
ちいさな物語

#075 マスク社会の裏側で

コロナ禍でマスクは社会の必需品になった。コロナ禍がおさまった現在でも街を歩く何人かが口元を隠し、表情が見えなくなる。そのことを不審に感じる者はいない。皆、慣れてしまっていた。そしてある日、気づいたのだ——街には以前よりも活気が満ちていること...
ちいさな物語

#074 神さまの憂鬱

町はずれの小さな神社に、野良猫がよく集まる場所があった。僕は昔からその猫たちを眺めるのが好きで、暇があればよく通っていた。今日も境内の石段に腰を下ろし、猫たちが気ままに歩き回るのを眺めていた。毛づくろいをする者、昼寝をする者、鳥を狙ってじっ...
SF

#073 鋼の神と電子の記憶

むかしむかし——いや、そう遠くない未来のちょっと先の話だ。その街には、かつて「鋼の神」と呼ばれるものがいた。神といっても、伝説の神々のように天上から奇跡を降らせるわけではない。それは巨大な機械仕掛けの存在であり、この都市を守護するために作ら...
ちいさな物語

#072 頭の上に

誰もが俺の顔を見たあと、一瞬だけ視線を上にずらす。頭の上に、何かいる——でも、見た人はみんな、すぐに忘れる。
ちいさな物語

#071 見たことがある

「もう逃げ場はないぞ!」暗闇にそびえる崖の上、刑事・田村は拳銃を構えて叫んだ。その先に立つのは、指名手配中の銀行強盗犯・柴田。汗だくの顔を歪ませ、肩で息をしながら後ずさる。しかし、もう後ろは崖。ここからの逃亡は不可能だ。「くっ……」柴田は崖...
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#070 焚火の夜の奇妙な話

旅の途中、俺は森の奥の開けた場所で焚火の光を見つけた。火を囲むのは四人の旅人。見た感じ知り合い同士というよりはたまたま居合わせただけのようだった。こういう場所では野営に適した場所を取り合うか、何かの縁と割り切るかのどちらかだ。しかしこんな森...
ちいさな物語

#069 不可解な裁判

気がつくと、見知らぬ法廷に立たされていた。罪状もわからないまま、黒ずくめの傍聴人がじっとこちらを見つめている。